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日産R35 GT-R、18年の歴史に幕

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 NISSAN R35 GT-R

2025年8月26日、日産自動車はR35型GT-Rの生産終了を発表した。2007年のデビューから18年間にわたり生産され、世界中のスポーツカーファンを魅了してきたR35 GT-Rは、累計約48,000台が世に送り出された。

最後の1台は「プレミアムエディションT-スペック」のミッドナイトパープルで仕上げられ、栃木工場でオフライン式が行われた。

 

世界が認めた「マルチパフォーマンス・スーパーカー」

R35 GT-Rは、スカイラインGT-Rの伝説を引き継ぎ、「誰でも、どこでも、どんな時でも最高のスーパーカーライフを楽しめる」というコンセプトを体現した存在だ。強力なVR38DETTエンジン、アテーサET-S全輪駆動システム、革新的な空力設計を備え、そのエンジンは横浜工場の“匠”と呼ばれる熟練工によってすべて手作業で組み立てられた。

また、従来のフルモデルチェンジではなく、毎年のモデルイヤーごとの改良によって進化を続け、ニュルブルクリンクや筑波サーキットで数々のラップタイム記録を打ち立ててきた。

 

モータースポーツでの栄光

R35 GT-Rはサーキットでも輝かしい戦績を残した。スーパーGT GT500クラスでは2008年のデビューイヤーに7勝を挙げ、その後も2011年、2012年、2014年、2015年にチャンピオンを獲得。さらに、市販車をベースとしたGT-RニスモGT3は、国内のスーパーGT GT300やスーパー耐久で複数のタイトルを獲得したほか、海外でも2015年のバサースト12時間レースで劇的な総合優勝を飾るなど、“伝説”を築いてきた。

 

紡がれたDNA 性能を磨き続けたNISSAN GT-Rストーリー

究極のドライビングプレジャーを追求した21世紀のスポーツカーとして、2007年に誕生したNISSAN GT-R。その発端は2001年10月、東京モーターショーに突然姿を現わした「NISSAN GT-R Concept」であった。

一切の事前予告なく、搭載されるエンジンや駆動システムについて公表されないなど秘密のヴェールに包まれてはいたが、将来の生産化が約束されるとともに、「スカイラインGT-R」とは異なり海外進出も念頭に入れていることが当時の日産自動車より明らかにされた。翌2002年、この年8月末をもってスカイラインGT-Rの販売を終了することが発表され、GT-Rの歴史にはしばらくの空白が生まれることとなった。しかし次の年、再び東京モーターショーにおいて「GT-Rは4年後の東京モーターショーで復活する」ことがアナウンスされた。

 

日産、そしてGT-Rのファンにとっては長い長いブランクであったが、予告通り2007年10月24日に新型GT-Rの量産型が発表され、同年12月6日にまずは日本市場に送り出された。NISSAN GT-Rは登場した当初から卓越したスペックを誇っていた。

GT-R専用ユニットとして新開発された「VR38DETT」型ガソリン・ツインターボ・ユニットは353kW(480PS)/6,400rpm、588N・m(60kgf・m)/3,200-5,200rpmを発生。カーボン製プロペラシャフトを通じて車体後方へ送られた出力は6段デュアルクラッチトランスミッションで変速され、電子制御式4WDが前後アクスルへ分配、20インチのランフラットタイヤに伝えられる。フロント:ダブルウィッシュボーン式、リヤ:マルチリンク式のサスペンションには、減衰力可変式のショックアブソーバー Bilstein DampTronicとブレンボ製高性能ブレーキが与えられた。

他の高級乗用車と同一のラインで生産できる構造であり、実用的に使える後席やトランクルームを備えながら、超高価な少量生産スポーツカーを凌ぐような装備と性能を身につけたGT-Rの目標は「量産車世界最速」の称号だった。

2008年4月、かねてから開発の舞台となっていたニュルブルクリンク北コースにおいて、GT-Rは7分29秒03のラップタイムを記録。当時の量産車のレコードを塗り替えることに成功した。ライバルたちも年々進化を続ける中、目指したゴールに辿り着いたことは、日本の自動車史に残る重要な業績のひとつといえよう。

 

終わりなき進化

R34までの世代と同様、GT-Rが目指す究極に終わりはない。NISSAN GT-Rはモデルイヤーが切り替わるごとに着実な進化を遂げていった。エンジン最高出力は485PS(2009年モデル)~530PS(2011年モデル)~550PS(2012年モデル)と年を追うごとに増強された。「匠」の手仕事による組み立て精度向上、吸排気効率アップや燃焼状態改善などさまざまな手が尽くされた成果だ。車体側も、冷却性能向上、ボディ補強、サスペンション設定変更など、すべての要素に配慮して総合力を高めるべく、毎年のように細かな改良が繰り返された。

2009年にはより強力な制動力を発揮し、バネ下重量低減による総合的な性能向上に貢献する専用カーボンセラミックブレーキを装着、専用設定のサスペンションを備え、レカロ製のカーボンバケットシート、レイズ製アルミ鍛造ホイールを採用して軽量化を施した「SpecV」を投入。2011年モデル登場に際してはサーキット走行専用の「Club Track edition」を設定する一方、厳選された本革素材をドイツの職人が手作業で貼り込むインテリアや特別なサウンドシステムを備える「EGOIST」が追加された。

 

多様化するオーナーの要望に対応する姿勢が、より明確に示されたのが2014年モデルである。スタンダードモデルでは基本性能の底上げによる洗練された速さを追求した「大人が楽しめるGT-R」を掲げ、「GT:グランツーリスモ」の精神に則った上質な乗り心地と優れた性能を強調する一方で、新たに投入した「GT-RNISMO」では「R:レーシングテクノロジー」に基づく圧倒的な速さを集中的に極めた。

高効率大容量の専用タービンを搭載したGT-R NISMOのエンジンは最高出力600PS(441kW)を発生。外装部品にカーボンファイバー素材を幅広く投入し、軽量化と低重心化、大幅なダウンフォース向上を実現した。サスペンション、タイヤ、ホイール等にも専用部品が惜しみなく用いられ、ニュルブルクリンク北コースに持ち込まれたオプションパック装着車は7分08秒679のラップタイムを記録、再び量産車世界最速の座を手に入れた。

頂点を極めてなお、進化は留まることを知らない。2015年モデルでは「Track edition engineered by NISMO」をGT-Rに追加設定。2017年モデルは内外観を刷新し、GT-R NISMO譲りの気筒別点火時期制御を採用、最高出力を570PS(419kW)にまで高めた。同時にさらなるボディ剛性向上に合わせてサスペンション全体の設定を見直し、高速走行時の修正操舵の発生やヨーレートの変動を抑えることに成功。吸音材・遮音構造の見直しなど快適性改善にも配慮した。

 

2020年モデルではターボ高効率化技術「アブレダブルシール」を採用して加速レスポンスを向上。2022年モデルでは専用カーボンセラミックブレーキ、カーボン製リヤウイング等を組み合わせた「T-spec」を新たに設定した。GT-R NISMOで培った技術をスタンダードモデルに織り込むことで、好ましい循環が作り出された。

「これ以上何ができるのか」と問い続けた末に、枚挙に暇がないという表現が相応しい、無数の改良を経験したNISSAN GT-R。そのドライバーとなることは、自動車史の証人のひとりとなることを意味する。

 

日産のコメント

日産自動車のイヴァン・エスピノーサ氏は次のようにコメントした。「18年間の長きにわたり、R35 GT-Rは自動車史に不朽の足跡を残しました。その輝かしい歴史は、私たちのチームと世界中のお客さまの情熱の証です。この特別なストーリーの一部を担ってくださった皆さまに感謝します」

さらに「これはGT-Rとの永遠の別れではありません。GT-Rは、いつか再び皆さまのもとに戻ってくることを目指しています。GT-Rの名前には高い期待が寄せられており、真に特別なクルマにのみ与えられるものです」と、将来の復活を示唆した。

 

将来への期待

日産は「GT-Rの名を次世代に向けて再定義することに取り組んでいる」としており、R35で培われた知見は未来のGT-Rへと受け継がれることになる。18年に及ぶ栄光の歴史を終えたR35 GT-R。その魂は、未来のGT-Rとして新たな伝説を築くために眠りにつくだけだ。電動化や新素材技術、そして次世代のドライビング体験と融合することで、かつてない進化を遂げる日が近いかもしれない。再びその名が呼び覚まされる瞬間、世界中のファンが胸を高鳴らせるに違いない。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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