放送法の実効性を問う歴史的訴訟 寄付200万円超が集結

TBSの番組「報道特集」に対する“偏向報道”批判をめぐり、インターネット番組『SAKISIRUチャンネル』を運営する報道アナリスト・新田哲史氏が、ついに行政訴訟を提起した。訴訟の相手はTBSではなく、放送制度を所管する総務省である。訴えの内容は、放送法第4条に基づき、総務省に対して「放送事業者に対する監督義務を果たすよう義務付けを求める」というものだ。
新田氏は、かつて読売新聞記者として政治や報道に関わり、現在は企業や政治家のPR・報道分析などを手がけるコンサルタントでもある。今回の訴訟では、報道機関と行政、そして視聴者をつなぐ「放送制度の根幹」に問題意識を持ち、制度の改善を訴えるかたちとなった。
「総務省が放送法に定められた監督を怠っている現状は、結果として放送の中立性を損なっている。視聴者が真実に触れる権利を守るためにも、司法の場で問い直したい」と新田氏は動画内で語っている。
総額200万円の寄付で成立 支援者からの厚い信頼
今回の訴訟は、多くの支援者による寄付により成り立っている。提訴に至るまでに集まった寄付総額は182万2443円。これに加え、新田氏が代表を務める「株式会社ソーシャルラボ」が自ら20万円を拠出し、総額は200万円を突破した。
これまでの支出は弁護士費用、証拠映像の複製費、書類の印刷・郵送費などで96万6150円に上り、今後も鑑定費用や証人招致に関する支出が見込まれる。新田氏は「10万円を一人で寄付してくださった方もいて、本当に感謝しかない」と語り、さらなる支援を呼びかけている。
日本初の「放送法義務付け訴訟」か 制度改革の契機に
この訴訟は、いわゆる「放送法第4条」の義務を総務省に履行させることを目的とした、国内初の行政訴訟とみられる。放送法第4条は、報道の政治的公平性、多角的論点の提示、事実に基づく報道を義務付けているが、罰則規定や明確な監督指針がないため、放送事業者による“恣意的な報道”が野放しになっているとの批判が根強い。
「この訴訟が通れば、今後の行政の姿勢や制度の枠組みにも影響を及ぼす可能性がある」と新田氏は述べており、単なるTBS批判にとどまらない、放送制度全体への問いかけとして訴訟を位置づけている。
SAKISIRUの活動資金も拡大中 報道の現場から制度を動かす
新田氏が代表を務める『SAKISIRUチャンネル』は、YouTubeメンバーシップを通じて着実に支持を広げている。現在、メンバー数は500人を超え、有料会員限定でスクープ裏話や取材中の仮説などを公開している。
また、チャンネルの一般活動支援として、直近2カ月間で50万143円の寄付が集まっており、兵庫県での取材や過去の救命プロジェクト支援にも活用された。チャンネル登録者への還元として「リアル飲み会」も開催予定であり、単なる報道発信にとどまらない“共創型メディア”としての性格も強めている。
旧来メディアへの問題提起
報道アナリストという立場から、制度と報道の間に存在する“緩い責任構造”に挑戦を仕掛けた今回の訴訟。新田氏の姿勢は、既存メディアでは表に出にくい問題に真正面から踏み込むものだ。
「TBSの問題は一つのきっかけに過ぎない。問題は、誰が“偏向”を監視し、どう是正していくのかという構造そのものにある」
そう語る新田氏の視線の先には、「公共の言論空間の健全化」というテーマがある。放送の自由と行政の責任、その緊張関係を可視化するこの訴訟の行方は、メディアと社会のあり方をめぐる重要な試金石となるだろう。