
静岡県伊東市の田久保真紀市長が、学歴詐称疑惑を巡り13日午前10時から開かれる市議会の百条委員会に証人として出頭する意向を明らかにした。市長は13日朝、自身のSNSで出頭を表明し、過去の委員会で出された証言や資料に「根拠がない」とする理由を挙げて反論する構えを示した。代理人弁護士の同席も申請しているが、委員会側は当日承認が必要との立場を取っており、可否は本番直前まで不透明な状況だ。
出頭決定の背景
今回の出頭は、市長にとって重要な判断となった。これまで田久保市長は、委員会で取り上げられた学歴詐称疑惑に関する証言や資料の信憑性に疑問を呈し、慎重な対応を取っていた。しかし、SNSで「事実を正すため、今回は出頭する」と明言。市政への不信感拡大を防ぐ狙いもあるとみられる。
市長が挙げた3つの反論ポイント
田久保市長は、出頭理由として次の3点を具体的に列挙している。
弁護士同席を巡る攻防
- 匿名証言の根拠欠如
前回委員会で証言した「私の知人と称する匿名人物」について、市長は「単なる伝聞であり、裏付ける証拠がない」と主張した。 - 匿名郵便の証言者不在
委員会に届いた普通郵便には「卒業証書を自分たちで作り渡した」とする“卒業生で友人”の証言が記されていたが、市長は「該当する人物は存在しない」と否定している。 - 「議長がチラ見せ」証言の否定
卒業証書を議長が“チラ見せ”したとされる証言についても「事実ではない」と強く否定した。
市長は、出頭にあたり法的助言を受ける目的で代理人弁護士の同席を事前申請している。しかし委員会事務局は「当日の承認が必要」との見解を示しており、13日朝の時点で可否は決まっていない。市長は「事前に問い合わせているのに判断が出ていないのは遺憾」とSNSで不満を示しつつも、委員会の最終判断を見守る考えを示している。
百条委員会とは
百条委員会は、地方自治法第100条に基づき地方議会が設置できる特別委員会で、調査対象者に証言や資料提出を義務付ける強い権限を持つ。証言拒否や虚偽証言には罰則(拘留や科料)が科されるほか、国会の国政調査権(憲法第62条)に相当する性質を持つ。市長や職員といえども、正当な理由なく拒否すれば処罰対象となる可能性がある。
黙秘権の可能性と委員会対応
一方で、憲法で保障される黙秘権は、刑事訴追の恐れがある場合に証言を拒否できる権利であり、百条委員会でも行使可能とされている。このため、市長が出頭しても、不利な事実に関する質問には答えず、黙秘する可能性がある。委員会は、証言拒否や部分的回答にどう対応するかも問われる。
学歴詐称問題の社会的影響
学歴詐称疑惑は政治家や公職者に対する信頼を揺るがす事案であり、過去には他の自治体でも市長や議員が辞職に追い込まれた例がある。経歴の透明性は有権者との信頼関係の基盤であり、今回の伊東市の事例も全国的に注目を集めている。特に市長は公約や政策推進力のほか、危機管理能力も問われる立場にあるため、委員会での説明姿勢は今後の市政運営に直結する。
今後の焦点
今回の出頭を受け、注目されるポイントは次の通りだ。
- 弁護士同席の可否がどう判断されるか
- 市長が黙秘権を行使するか否か
- 委員会が証言や証拠をどう評価し、最終報告に反映するか
- 調査結果が市長職の続投可否にどう影響するか
市長は過去に「辞任して市民の判断を仰ぐ」と発言したものの、その後撤回した経緯がある。このため、市民や議会関係者の間では進退問題への関心が高まっており、今回の委員会出頭は今後の市政の方向性を大きく左右する節目となりそうだ。