
真夏の炎天下に停めた車の車内温度は、わずか15分で50℃を超え、人命に関わる危険な環境へと変貌する。毎年、子どもやペットの熱中症事故が相次ぐ中、命を守るために「車内に置いてはいけない物」への理解が急務となっている。専門家は、リチウムイオン電池を含む電子機器や薬品、飲食品などを車内に放置する危険性を指摘し、使用者の意識改革を呼びかける。正しい車の使い方を知り、悲劇を未然に防ぐことが、夏のドライブに求められている。
わずか15分で「危険」水準に達する車内温度
梅雨明けを迎え、全国的に気温が急上昇する中、車での移動が増えるシーズンが始まった。しかし、その便利さの裏で、命に関わる危険が潜んでいる。JAF(日本自動車連盟)の調査によれば、真夏の炎天下では車内温度が50℃を超えることがあり、エアコンを止めてからわずか15分で熱中症指数(WBGT)は最上位の「危険レベル」に達するという。
とりわけ、小さな子どもや高齢者、ペットを車内に残すことの危険性は広く知られており、毎年のように悲惨な事故が報道される。一方で、私物や日用品であっても、炎天下に車内に放置すべきではないものがある。All About「中古車ガイド」監修の籠島康弘氏は「夏の車内は、想像を超える過酷な環境」であると警鐘を鳴らす。
専門家が指摘「車内に絶対置いてはいけない3つのもの」
籠島氏が特に注意を呼びかけるのは、次の3つである。
1.電子機器(スマートフォン・タブレット・モバイルバッテリーなど)
スマートフォンやモバイルバッテリーに使われているリチウムイオンバッテリーは、高温下で劣化が進み、発火や爆発のリスクが高まる。液晶画面や回路も熱に弱く、故障や変色の原因になる。電子タバコや携帯用扇風機なども同様に注意が必要だ。
2.医薬品・化粧品・スプレー缶
医薬品は温度管理が必要なものが多く、高温によって薬効が失われるばかりか、有害物質へと変質する恐れもある。化粧品も成分が分離したり、刺激が強くなったりする可能性がある。さらに注意すべきはスプレー缶である。高温により内部圧力が上がり、破裂して火災や人身事故を引き起こす危険性が極めて高い。
3.飲食品(特に炭酸飲料、生もの、乳製品)
炭酸飲料は熱でガスが膨張し、容器の破裂を招く。スナック菓子も袋が膨張し、開封時に破裂するケースがある。さらに、生肉や乳製品は腐敗のスピードが格段に早まり、食中毒を引き起こす可能性もある。
「正しく使う」ことが事故を防ぐ第一歩
車内温度の上昇を抑えるための方法として、以下の対策が挙げられる。
- サンシェードの使用:直射日光を遮り、ダッシュボードやシートの温度上昇を抑制する。
- 日陰への駐車:木陰や建物の陰など、直射日光を避けた場所を選ぶ。
- 保冷グッズの活用:クーラーボックスや保冷バッグを用いて食材や薬品を保護する。
- エアコン使用後の換気:使用後もすぐに窓を開け、熱気を逃す。
しかし、これらの手段も「補助的な対策」に過ぎない。籠島氏は「高温に弱い物、高圧ガスを含む物、腐敗の恐れがある物は、基本的に車内に置かない」ことが最も重要だと語る。
見落とされがちな「短時間放置」の危険性
「ちょっとだけだから」「すぐ戻るから」という油断が、重大な事故を招く。JAFの実験によれば、外気温35℃の条件下で、エンジンを停止した車内はわずか10分で車内温度が約45℃に達し、30分後には50℃を超えた。さらに、エアコン停止後15分で**熱中症指数(WBGT)が最上位の「危険レベル」**に達したという報告もある。
たとえ数分であっても、直射日光があたる車内では急激な温度上昇が起こる。専門家は、「5分未満でも乳幼児や高齢者、ペットにとっては命に関わるリスクがある」と警告する。スマートフォンや財布を取り出す感覚で、持ち物や同乗者の安全にも細心の注意を払う必要がある。