
政府・与党は、物価高騰対策として検討していた全国民を対象とする3万〜5万円の現金給付案について、実施を見送る方向で最終調整に入った。4月16日、複数の与党関係者が明らかにした。代替として、電気・ガス・ガソリンに対する補助金を柱とした経済対策の策定が急がれている。
数兆円規模の財源を要する給付案が棚上げされたことにより、政府は今国会での補正予算案の提出も見送る見通しだ。
与党内協議と世論の反応
与党関係者によれば、15日に森山裕幹事長と小野寺五典政調会長が首相官邸で石破茂首相と会談。経済対策の方向性を非公式に協議したとされる。現金給付案は7月の参院選を見据えた「目玉政策」として一時は検討されたが、各社の世論調査で「評価しない」が過半数に上るなど否定的な声が強く、毎日新聞が4月に実施した調査でも反対は57%と賛成(20%)を大きく上回った。
自民党幹部の一人は「ばらまきをやれば票を減らす」と述べ、石破首相も周辺に「国民の評判が悪いなら、やる意味はない」と語ったという。代替案として一時浮上したマイナンバーカードの普及策「マイナポイント」の活用も見送られる方向だ。
関税交渉と参院選の見通し
今後は、17日から始まる米国との関税交渉の行方も経済対策に大きく影響を与えるとみられる。自民幹部は「トランプ関税問題がどう転ぶかは不透明」と述べ、今後の展開を見極める姿勢を見せている。参院選の党公約にはこうした外交課題も盛り込む方針で、必要な財政措置については秋の臨時国会で補正予算を編成する構えだ。
一方、公明党幹部は、自民党側から今国会での補正予算提出の見送りについて事前に連絡を受けたと述べ、「少数与党である以上、野党の協力がなければ成立は困難」と指摘した。
補助金で即時対応へ
当面の対策として政府は、3月末で終了した電気・ガスへの補助金の再開に向けた調整を進めている。酷暑が予想される夏を見据え、6月ごろの再開を目指す。また、ガソリン補助金については、5月からの前倒し実施を決定。補助額は1リットルあたり10円とされ、財源は2025年度予算に計上された約7000億円の予備費を充てる方針だ。
SNSには制度設計への疑問や政府支出のあり方への不信感も
SNS上では政府の対応に対して賛否が分かれている。RAUL株式会社代表の江田健二氏は、「補助金は実施と停止を繰り返してきたが、特に電気・ガスの補助は消費者にとって分かりづらく、使用量が多い人ほど得をする不公平な制度だ」と批判。今後の制度設計には公平性と可視性が求められると指摘した。
また、ある投稿では「給付も減税もしないまま、1兆円に満たないガソリン補助で本当に物価高への対策となるのか」と疑問視する声も見られる。さらに、給付の是非よりも「国会議員や官僚の削減こそが本質的な財政改革だ」といった根本的な構造問題への言及も相次いだ。中でも、こども家庭庁の組織体制に対する厳しい批判が目立った。
経済対策の行方は不透明
政府は今後も物価高への対応を重要政策として掲げる方針だが、世論の批判や予算制約との狭間でのかじ取りが続く。参院選を前に、どのような経済政策が支持を集めるのか。現金給付という即効性のある対策を放棄した今、国民の期待に応えるには制度の透明性と持続可能性が試されることになりそうだ。