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LGBTQなど政府用語も変更とのトランプ次期政権 反ESGの潮流がもたらす日本への影響

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LGBTQ+が悲しんでいる様子

トランプ次期米政権が、政策転換とともに政府文書やウェブサイトに使用する公式用語を大幅に変更する可能性が高まっている。気候変動やLGBTQ+の権利に関する記載が削除される一方、移民問題では「不法在留外国人(illegal alien)」という表現が復活する恐れがあると指摘されている。

この政策変更の意図はどこにあるのか。また、その影響はどのように日本企業へ波及するのか。ロイターの報道を基に深掘りする。

政策転換の背景 なぜLGBTQ+の権利が標的に?

トランプ次期政権が進めようとしている政策変更は、単なる言葉の置き換えにとどまらず、政府の基本姿勢を大きく変える可能性がある。ロイターの12日の報道によれば、気候変動に関する文言削除に加え、LGBTQ+の権利に関する用語の見直しが進められるという。

非営利団体「環境データ&ガバナンス・イニシアチブ」のグレッチェン・ゲルケ氏は、「前回の政権では、単なる表現の変更を超え、気候変動に関する情報自体が削除されました。今回も同様の情報抑制が予想されます」と語っている。

特にLGBTQ+の権利に対する政府の姿勢は、政策の方向性を象徴するものであり、保守的な価値観の復活を示している。この流れが強化されれば、社会的マイノリティの権利後退が現実のものとなる。

「正義」の文言は消えるのか 社会的影響を読み解く

バイデン政権が「環境正義」の概念を重視してきたのに対し、トランプ次期政権はこのような正義に基づく政策を後退させる可能性がある。

政権移行チームの報道官キャロライン・レビット氏は、「トランプ氏は国民の安全と繁栄を第一に考えている」と述べたものの、具体的な気候変動政策についてはコメントを避けたようだ。曖昧な態度をとること自体が、今後の政策変更の大幅な後退を示唆している。

LGBTQ+の権利に対する懸念:企業が取るべき行動とは

トランプ氏が前回大統領に就任した際、政府はLGBTQ+に関する言及を大幅に減らした。今回の政権でも同様の動きが予想されており、LGBTQ+の権利擁護団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン」のデービッド・ステイシー氏は、次期政権がトランスジェンダーの権利を大きく後退させることを懸念している。

「性的指向」や「性自認」といった用語が政府文書や規制から削除されることで、トランスジェンダーの存在を社会から抹消する動きが加速する恐れがあるという。こうした政策が社会的に受け入れられれば、マイノリティの権利が損なわれる可能性がある。

ネットではこの動きを喝采する声が大きいが、企業はこの流れをどう捉えるべきだろうか。特に日本企業は、上場企業を中心にサステナビリティ対応は有価証券報告書にも記載が義務化されるなど、対応が事実上必須化していた。そのなかでも、好んで記載されたのが、多様性を尊重するというDEI(多様性、公平性、包括性)、D&Iの施策だった。

日本企業への影響と長寿企業からの学び

今回の政策転換は、日本企業にとっても無視できない影響を与える。ESGやDEIの施策が後退することで、これまで推進してきたサステナビリティ活動に逆風が吹く可能性がある。ソフトローであるSSBJなどの開示フレームワークの義務化が27年度より、プライム企業の一部から段階的に始まる見込みだが、この流れにも影響がでるのだろうか。

これまでESGにどこよりも積極的だった欧州の流れが気になるところだが、ここ1年ほどは欧州でも反ESGが潮流となっていると聞く。また、ドイツをはじめ、極右政党の台頭が各国で著しいことを考えれば、今後トランプと同じようにサステナビリティ系のイニシアチブから脱退する国もでてくるのではないだろうか。

最近、サステナビリティ界隈の人と話をすると、落ち込んでいることが多い。しかし、ここで重要なのは、本質を見誤らないことだ。日本は世界で最も多くの長寿企業を擁する国であり、その背景には、近江商人の「三方よし」に象徴されるような、多様なステークホルダーを大切にする価値観が根付いている。

サステナビリティとは、単なる環境保護や多様性の推進にとどまらず、関わる全てのステークホルダーに利潤を永続的に分配し、持続可能な社会を築くことに他ならない。この理念を忘れなければ、トランプ政権の反ESG的な政策が一時的に吹き荒れたとしても、社会のためになる芽をこの期間も着実に育てることができるだろう。

企業は短期的な政治的変動に惑わされず、長期的な視点で持続可能なビジネスモデルを追求するべきだ。長寿企業の成功事例から学び、ステークホルダー全体に利益をもたらす経営を推進することで、真の競争優位性を確立できるだろう。

今こそ本質を見失わない時

トランプ次期政権による政策変更は、短期的には社会に混乱をもたらすかもしれない。しかし、日本企業が長寿企業の理念を学び、サステナビリティの本質を捉えた経営を続けることで、長期的には社会に根付く新たな価値を創造できる。

日本企業は、今こそ社会的価値を重視し、多様なステークホルダーとの信頼関係を築くことが重要だ。ステークホルダーエンゲージメントを重ねること、そうすることで、次の時代に向けた競争力を持続的に高めることができるだろう。

【トランプのその他の報道はこちらから】

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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