
新品のままゴミ捨て場へ直行する服が、年間5,000万着。その一方で、物価高に追い詰められ「月5,000円」の服代さえ捻出できない大学生たちがいる。この残酷なまでのミスマッチを「徳」という名の刀で切り裂くのが、株式会社ディープサンクスの挑戦だ。
新品がゴミに変わる不条理
「もったいない」という言葉では片付けられない。国内アパレル業界では、一度も袖を通されない服が年間1万5,000トンも廃棄されている。
対照的に、今の大学生の半分以上は奨学金に頼り、服への支出は20年前の半分以下。そんな「服を捨てたい企業」と「服が欲しい学生」を繋ぐ禁断のプロジェクトが、2026年に本格始動する循環型ファッション『ふくとく。』である。
「聖域」が生んだ魔法の安売り
なぜ、有名ブランドがこぞって参加するのか。その秘密は、大学という「クローズドな空間」にある。街中の安売りではブランドの格が下がるが、キャンパス内という限定されたマーケットなら、価値を守りながら学生を応援できる。
さらに驚くべきは、ただの古着回収に留まらない点だ。全国の大学をネットワークで結び、「〇〇大学産リユース」という新たなブランド価値を付与。他社が成し得なかった広域な循環システムを、彼らは構築してしまった。
「得」より「徳」を積み上げる経済
「どれだけ得をしたかではなく、どれだけ徳を積んだか」。代表の重延賢治氏が掲げる哲学は、現代の資本主義への挑戦状とも取れる。プロジェクト内で買い物をしたり、回収に協力したりすると、「ふくトークン。」が貯まる。
これが社会貢献団体への寄付に変わるのだ。自分がお洒落を楽しむことが、巡り巡って誰かの救いになる。「エゴ」を「徳」に変換するこの巧妙な仕掛けが、利己的な消費に疲れた若者たちの心を掴んでいる。
廃棄品が「宝の山」に変わる瞬間
ディープサンクスの真骨頂は、学生を単なる「客」として扱わないことにある。回収された服は、服飾を学ぶ学生の手でアップサイクルブランド「Lab 29-109」として再生される。企業が持て余した「負の遺産」が、学生の感性によって「唯一無二の作品」へと化けるのだ。
これは、在庫を資産に変える魔法である。ビジネスの冷徹な合理性と、日本古来の精神性。この二つが融合したとき、日本の大学キャンパスから世界を動かす新しい経済圏が産声を上げる。



