
捨てられるはずのブドウの葉に、一筋の光が差した。PATTERN PLANNINGが手掛ける「北海道TEA」は、単なるアップサイクルではない。地域の風土を飲み物に封じ込める、執念のテロワール。その知られざる舞台裏に迫る。
畑のゴミが宝石に変わる瞬間の目撃
北海道の初夏、広大なヴィンヤードに鋭い鋏の音が響く。 良質なワインを造るために不可欠な「除葉」という作業だ。 これまで、その過程で切り落とされた葉は、誰に見向かれることもなく土に返されるだけの運命だった。 しかし、2026年3月、その「畑のゴミ」が、都心のレストランで称賛を浴びる極上の一杯へと変貌を遂げた。
PATTERN PLANNINGが発表した2025年産の予約販売。 それは、ワイン用ブドウの葉を紅茶と同じ製法で酸化発酵させた、世にも珍しい「ワインブドウリーフティー」だ。
グラスを回せば、ワインさながらの芳醇な果実香が鼻をくすぐり、口に含めば心地よい酸が喉を潤す。 ノンアルコール、かつノンカフェイン。 酒を愛する者も、そうでない者も、等しく北海道の土壌を感じられる魔法の飲料である。
7つのワイナリーが競う味の競演
このお茶が他と一線を画すのは、その圧倒的な「透明度」にある。 今回の新作には、余市とニセコの7つのワイナリーが名を連ねた。 注目すべきは、同じ「ブドウの葉」でありながら、産地によって全く異なる表情を見せる点だ。
例えば「ドメーヌタカヒコ」の葉は、お茶らしい渋みと深い醸し感を見事に表現している。 一方で「山田堂」の葉を冷やして飲めば、弾けるようなフルーティーな酸が夏を予感させる。 同社は、本来廃棄される資源を丁寧に「収穫」し、精密に「加工」することで、ワインと同様のテロワールを再現することに成功した。 「傾斜地での収穫は想像を絶する重労働です」と、現場に立ち会った関係者は漏らす。 その過酷な作業の先に、この複雑な味わいが宿っているのだ。
偶然のつぶやきから始まった革命
なぜ、これほどまでに手間のかかる事業に挑んだのか。 その発端は、代表の赤坂若菜氏が耳にした、生産者の何気ない一言だった。 「この葉っぱ、何かに使えないかな……」 その呟きに宿っていたのは、愛情を込めて育てた作物を無駄にしたくないという農家の悲鳴にも似た願いだった。
赤坂氏はその声を拾い上げ、北海道の豊かな自然を循環させるという哲学を掲げた。 ブドウの実だけが主役ではない、葉も、そしてその土地の空気もすべてが価値であるという視点の転換だ。 2025年からは、この茶葉をベースにした「コンブチャ」の展開もスタート。
ただの「お茶の販売」に留まらず、未利用資源に光を当てることで地域経済を循環させる。 その志は、いまや農福連携の輪をも巻き込み、大きなうねりとなっている。
捨てられたものに魂を宿す思考の力
PATTERN PLANNINGの挑戦から、私たちが学ぶべきことは多い。 ビジネスの世界では、効率化の名の下に多くのものが切り捨てられていく。 しかし、その「捨てられたもの」の中にこそ、他社が決して真似できない真のストーリーが隠されているのだ。
彼女たちは、それを単なる「エコ」という綺麗な言葉で飾らなかった。 レストランのペアリングに耐えうる「嗜好品」としての完成度を追求し、プロを唸らせる品質にまで昇華させた。
「お酒を飲めない方にも、北海道の個性を届けたい」 その一途な想いは、贈答品として、あるいはホテルのウェルカムドリンクとして、着実に人々の心に浸透しつつある。 次にあなたが手にするグラスの中には、北の大地の再生の物語が満たされているはずだ。



