
「ゴミ」として眠るはずだった伝統織物に、再び命を吹き込む。広島発のアップサイクルブランド「ZANPUP」を展開する株式会社Raymakaは、希少な金襴織物の残布を現代的なバッグへと昇華させ、新たな市場を切り拓いている。
広島から発信されるアップサイクルバッグの静かな熱狂
広島市中区のホテル「KIRO広島」の一角に、鈍い黄金色の光を放つプロダクトが並んでいる。2026年2月21日から始まった、株式会社Raymakaによるブランド「ZANPUP」のポップアップストアだ。
展示されているのは、広島県福山市で生産される「金襴織物」の残布を用いたバックパックやサコッシュである。これらは本来、生産過程で生じる余り布として廃棄を待つ運命にあったものだ。それらが今、クリエイティビティという魔法をかけられ、洗練された一点物のプロダクトとして息を吹き返している。
伝統を「守る」のではなく「使い切る」という独自性
同社が他社と一線を画すのは、素材に対する徹底した敬意と、それを「日常」に落とし込むバランス感覚にある。多くの伝統工芸ブランドが、高級品としての付加価値を追うなか、ZANPUPはあえて3WAYバックパックという機能性に優れた現代の道具をキャンバスに選んだ。
「素材が持つ表情やストーリーを大切にしたい」と語る同社の姿勢は、単なるリサイクルとは一線を画す。金襴織物は、帯や能衣装に用いられる極めて豪奢な素材だ。その残布を、堅牢な実用品へと再構築する試みは、伝統技術の延命ではなく、現代のライフスタイルへの「接続」を意味している。
背景にあるのは素材への愛着と旅する好奇心
この取り組みの根底には、末宗千登世代表が抱く、素材の可能性を限界まで引き出すという哲学がある。ブランド名の由来とも言える「残布(ZANPU)」に、価値を跳ね上げる「UP」を組み合わせた言葉遊びには、捨てられるはずのものに宿る美しさへの揺るぎない信頼が込められている。
それは、かつて「もったいない」という言葉が内包していた精神を、現代のサステナブル文脈で再解釈した結果とも言えるだろう。流行に消費されるデザインではなく、素材が歩んできた背景を纏うバッグは、所有することへの本質的な問いを投げかけてくる。
広島発の小さなブランドが経済界に示唆すること
株式会社Raymakaの歩みから学べるのは、地域資源の「負の側面(廃棄物)」を「正の資産」に転換する鮮やかな手腕だ。地場の伝統産業と手を取り合い、クリエイティブの力で新たな販路を築く手法は、地方創生の最適解の一つと言える。
「広島から全国へ、サステナブルなものづくりを発信したい」という静かな野心は、ポップアップを訪れる人々の手に取られるバッグを通じて、着実に形になりつつある。伝統を守るという重圧から解放され、自由に、そして軽やかに再生された金襴の輝きは、これからの日本のものづくりが歩むべき道筋を照らしている。



