
「これ、ゴミじゃないんだね」。少年の驚きが、静かな工場に響く。リサイクル機械の雄、日本シームが仕掛ける「オープンファクトリー」は、単なる見学ではない。製造現場から循環型社会の急所を突く、熱き挑戦の記録である。
技術屋のプライドが「教育」に宿る
埼玉県川口市。鉄の匂いが漂う工場の一角が、歓声に包まれる。 日本シーム株式会社が仕掛けるこのイベント、実は告知のたびに定員をオーバーするほどの人気だ。 累計参加者は180名。
子供たちが手にしているのは、家から持ってきた使い古しのペットボトルキャップだ。 それを自らの手で洗浄し、粉砕し、熱を加えて新たな形へと変えていく。 「洗浄・粉砕・成形」。 プロが使うガチの工程を、子供たちが「自分ごと」として体験する。
そこにあるのは、教科書の中のSDGsではない。 目の前でゴミが宝物に変わる、圧倒的な現実だ。
「本物」だけが持つ説得力
なぜ、このイベントがこれほどまでに人を惹きつけるのか。 答えは、同社がリサイクルプラントをゼロから組み上げる「機械メーカー」そのものだからだ。
用意された射出成形機は、安全性を極限まで高めつつも、中身はプロ仕様。 「洗浄して、細かくして、溶かして固める」。
この一連のプロセスを垂直統合で体験させる手法は、並のワークショップには真似できない。 粉砕されたプラスチックの破片を握りしめ、目を輝かせる子供たち。 その手触りこそが、環境問題への解像度を劇的に高めていく。
「技術だけでは勝てない」という告白
機械を作るプロが、なぜここまで教育に心血を注ぐのか。 その裏には、代表の木口達也氏らが抱く、ある種の「危機感」があった。
日本のマテリアルリサイクル率は、わずか20%程度。 どれほど高性能な洗浄機を開発しても、回収されるプラスチックに汚れや異物が混じれば、再生の道は閉ざされる。
「技術の力だけでは、循環型社会は完成しない」 彼らが行き着いた結論は、至極シンプルだった。 使う側の「意識」を変えること。
メーカーとしての「つくる責任」を、次世代の「捨てる意識」まで拡張させる。 この泥臭い啓発こそが、彼らの哲学の真髄といえる。
分別は「面倒な作業」から「創造」へ
この活動から見えてくるのは、社会課題を「自分ごと」に変える魔法だ。 事実、参加した保護者からは驚きの声が届く。 「家での分別が、見違えるほど積極的になった」 遠い世界の環境破壊を憂うより、目の前のキャップがどう生まれ変わるかを知る。
その原体験が、一人の人間の行動を根本から変えてしまう。 一企業の工場開放という「点」が、地域社会の行動変容という「線」につながる。 ゴミを資源と呼ぶための闘いは、川口の工場から、静かに、しかし確実に始まっている。



