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トヨタ×UCC、“水素”でつながる革新──クラウン70周年に描くサステナブルな「乗り心地の味」

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UCC上島珈琲
UCC上島珈琲 公式サイトより

トヨタ自動車のフラッグシップ「クラウン」と、UCC上島珈琲が“水素”を共通テーマに異業種コラボレーションを実現した。クラウン誕生70周年を記念し、UCCが世界初の大型水素焙煎機で4モデルをイメージしたオリジナルコーヒーを開発。

CO2を一切排出しない焙煎技術と、トヨタが進める水素社会構想が融合し、「乗り心地を飲み心地で表現する」という前例のない挑戦が生まれた。サステナブルと感性が交わる、新たな“ものづくり”の姿を追う。

水素がつなぐ、クルマとコーヒーの新しい物語

トヨタのフラッグシップモデル「クラウン」と、UCC上島珈琲が手を組んだ。
一見無関係に思える両者を結びつけたキーワードは「水素」だ。

クラウン誕生70周年を記念し、UCCが世界で初めて実用化した大型水素焙煎機を用いて、クラウンの4モデル──セダン、クロスオーバー、スポーツ、エステート──をそれぞれイメージした4種のオリジナルコーヒーが誕生した。

この異業種コラボレーションの根底には、カーボンニュートラル社会の実現という共通理念がある。
自動車の「乗り心地」を、コーヒーの「飲み心地」で表現する。そんな前例のない発想は、サステナブルと感性の融合を象徴する試みとなった。

サステナブルな焙煎──CO2ゼロの“美味しさ”

UCCが開発した大型水素焙煎機「ハイドロマスター」は、2025年4月、静岡県富士市の工場で稼働を開始した世界初の設備だ。
水素燃焼によって焙煎を行うこの技術は、CO2を一切排出しない。さらに、火加減の制御精度が極めて高く、温度カーブを繊細に操ることができる。その結果、コーヒー豆が持つ香り・酸味・甘味を最大限に引き出すことが可能となった。

土井克朗・UCCコーヒーアカデミー専任講師は語る。
「クラウンの“乗り心地”をコーヒーで表現するのは、初めての挑戦でした。トヨタの開発陣と試乗を重ね、加速感や静けさを“香り”と“余韻”で再現する設計を行いました。香りの立ち上がりで加速を、余韻の広がりで静粛性を表現しています」。

水素によるサステナブルな焙煎技術が、味覚と感性を結びつける架け橋となった。

クラウンの「乗り心地」を味覚で翻訳する

開発は約1年に及んだ。トヨタの開発チームがUCCから焙煎理論を学び、UCCの技術者がトヨタの研究施設「トヨタテクニカルセンター下山」で実際にクラウン4モデルを試乗。走行中の静粛性、加速時のGのかかり方、車内の空気感──その“乗り味”を、味覚という別の感覚に落とし込む試みだった。

味づくりのベースとなる豆は、クラウンの理念を象徴する3つの産地から選ばれた。
エチオピアは「おもてなしと伝統」、ブラジルは「普遍性と親しみやすさ」、そしてコロンビアは「挑戦と多様性」を意味する。

セダンブレンドは、エチオピアとコロンビアを組み合わせ、落ち着きと深みを表現。クロスオーバーブレンドは華やかでキレのある味に仕上げた。スポーツブレンドは軽やかで香味が際立ち、エステートブレンドは包み込むようなまろやかさと安定感を持つ。
豆、焙煎、そして哲学──すべてが調和し、味わいとしての「クラウンネス(Crown-ness)」が再構築された。

水素社会への道を、味覚で伝える

トヨタは、燃料電池車(FCEV)などの開発を通じて「つくる・運ぶ・使う」という水素社会の実現を掲げてきた。だが、清水竜太郎・クラウン開発チーフエンジニアは語る。
「水素という言葉はまだ一般の方々には遠い存在です。コーヒーという身近な体験を通して、『水素で味が変わる』と感じてもらえれば、理解と共感のきっかけになる」。

この発想は、エネルギー技術を“体験”として届けるという点で革新的だ。
単に車両を作るだけでなく、人々の日常の中に水素の価値を浸透させること。それはトヨタの“挑戦の精神”を体現する新しいアプローチでもある。

日本の「ものづくり」が生む共創の力

UCCの里見陵氏は、「水素焙煎コーヒーを通じて、水素をもっと身近に感じてもらいたい。食とエネルギー、両方の分野で仲間を増やしていきたい」と語る。
今回のプロジェクトは、単なる企業間のタイアップではなく、日本の“ものづくり”が垣根を超えて融合した象徴的な事例だ。

クルマとコーヒー、工業と嗜好──相反するように見える世界が、サステナブルという理念のもとで交わったとき、そこには新しい価値が生まれる。
水素が燃やすのは、もはや燃料だけではない。社会の想像力を、そして未来への情熱をも灯すのだ。

未来を味わう──サステナブルな贅沢の形

完成した「クラウン水素焙煎コーヒー」は、10月7日から全国6店舗のクラウン専門店「THE CROWN」で提供・販売が始まった。各モデルのブレンドは200g(豆)入りで、価格は3510円(税込)。

試飲会では、参加者から「車の個性が味に表れている」「香りがまるでエンジン音のように印象的」といった声が寄せられた。
コーヒーという飲み物が、車と同じように“体験”を提供する時代。環境への意識と感性の豊かさを両立させた、このプロジェクトは新しいサステナブルライフの形を提示している。

美味しいコーヒーを味わいながら、水素の可能性に思いを馳せる──。
それは、地球と共に生きる未来を“味わう”行為なのかもしれない。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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