
環境省は3月18日、日本の植物・菌類の絶滅リスクを評価した「第5次レッドリスト(植物・菌類)」を公表した。今回のリストでは、計2952種のうち2063種が絶滅危惧種に分類された。前回より207種が減少したものの、新たに絶滅と判断された種や絶滅危惧種へ指定された種も確認されている。
絶滅の危機からの回復 レブンアツモリソウの奇跡
北海道・礼文島に生育するレブンアツモリソウは、かつて園芸目的の乱獲により激減した。しかし、環境保全活動が功を奏し、個体数が平成28年の約3000株から令和3年には約5400株に増加。これにより「絶滅危惧IB類(EN)」から「準絶滅危惧(NT)」へと変更された。
同様に、淡水紅藻のオオイシソウも準絶滅危惧へ変更された。この種は小川や水路に生育し、かつては日本固有種と考えられていたが、近年の研究で世界的に分布していることが判明。これにより、絶滅リスクが低下したと評価された。
新たな絶滅危惧種 フジイロアマタケの未来は?
関東地方に分布するフジイロアマタケは、新たに「絶滅危惧IB類(EN)」に指定された。この菌類は、ブナやイヌブナが茂る中間温帯の森林内に局所的に分布している。しかし、森林伐採や気候変動、シカの食害による生育環境の悪化が深刻化。生育地が急速に減少していることから、今後さらなる保全対策が求められる。
ついに絶滅種に ヤクシマスギバゴケの消失
今回のレッドリストでは、新たに絶滅種(EX)と判断された種もある。鹿児島県・屋久島に生育していたヤクシマスギバゴケは、森林伐採や生息環境の悪化によって1973年以降確認されていない。苔類としては大型で識別しやすいため、誤認の可能性も低く、過去50年以上発見されていないことから正式に絶滅種に分類された。
また、かつて宮城県や長野県、和歌山県で確認されていた地衣類のイトゲジゲジゴケモドキも、1954年以降の採集記録がなく絶滅と考えられていた。しかし、2007年に愛媛県や高知県で新たな報告があり、情報不足(DD)へ変更。追加調査が求められる状況となっている。
未来への挑戦 絶滅危惧種の保全が急務
環境省は今回のレッドリストを社会全体に周知し、生物多様性の保全に向けた取り組みを強化する方針だ。特に、レッドリスト掲載種が密猟や盗掘の対象とならないよう保護策の充実を進める。
また、絶滅危惧種の中には個体数が回復しつつある種もあるため、今後も生息・生育状況の監視が必要だ。今回のレッドリスト改訂では、危機的状況が改善された種がある一方で、新たに絶滅危機に瀕する種も明らかになった。生物多様性の維持に向け、さらなる保護政策が求められる。