
「明日からもうムリです」——会社にそう言えない若者たちの駆け込み寺として急成長した退職代行サービス「モームリ」。その運営会社である株式会社アルバトロス(横浜市)が、3月31日までに公式ホームページ上で代表取締役を変更していたことが明らかになった。
HP上の新代表には、これまで同社で広報を担当していた浜田優花氏の名前が据えられているという。
記憶に新しい創業社長夫妻の「電撃逮捕」
「モームリ」といえば、世間を騒がせた今年2月の事件が記憶に新しい。弁護士資格を持たないにもかかわらず、退職希望者を特定の提携弁護士に斡旋し、その見返りとして違法な紹介料(キックバック)を受け取っていたとして、創業社長である谷本慎二氏と従業員である妻が弁護士法違反(非弁提携)の疑いで警視庁に逮捕されたのだ。

その後、法人としての同社や提携先の弁護士らも書類送検される事態に発展。「業界をクリーンにしたい」と豪語していた最大手の一角が、自ら“ブラックな実態”を露呈する皮肉な結果となった。
事件後、同社のSNSアカウントは「営業時間の縮小に伴い、一旦新規のお申し込み(リピーター含む)および無料相談の受付を停止させていただく」とアナウンス。事実上の休業状態に陥り、業界内では「このままフェードアウトするのでは」と囁かれていた。
なぜ今? 見え隠れする「GW特需」への執念
では、なぜここへ来て急転直下の代表交代に踏み切ったのか。その背景には、退職代行業界ならではのカレンダー事情が深く絡んでいるようだ。
全国紙社会部記者はこう語る。「明日から4月1日、いよいよ新入社員が入社してきます。近年、入社早々に会社の現実に幻滅し、ゴールデンウィーク(GW)前後までに退職代行を使って“即日退職”をキメる若者が急増しているんです。つまり、4月からGW明けにかけては、1年で最も退職依頼が殺到する超書き入れ時。この特需を指をくわえて見逃すわけにはいかないため、急ごしらえで新代表を立て、営業再開の体裁を整えたのでしょう」
実際、ネット上でもこの不自然なタイミングでの代表変更に対して冷ややかな声が飛び交っている。
「明日から4月1日。退職依頼が増える前に新代表を立てたということか」「おそらくGW明けにはかなりの依頼が来るからだろう」といった特需狙いを指摘する声や、「広報からの抜擢なら結構な出世だが、不祥事の後だけに完全に火中の栗を拾うようなもの」と新代表を案じる書き込みも見られる。
さらに、「株主は前の社長のままだろうから、どうせお飾り社長でしょ」といった辛辣な意見も少なくない。
新体制は「お飾り」か? 綱渡りの再出発
アルバトロスの担当者は31日、メディアの取材に対し「登記手続き完了後にプレスリリースの公開を予定しており、詳細についてはそちらでの公表をもって案内する」と言葉を濁している。
逮捕された創業者が依然として実質的なオーナー(株主)として君臨しているのであれば、広報出身の新代表は世間の批判をかわすための“防波堤”、あるいは“お飾り”に過ぎないという見方も拭えない。
他人の退職を代行する前に、自社の“違法な体質”を整理することはできたのか。GWの「新入社員トンズラ特需」に向けた、モームリのギリギリの綱渡り営業が始まろうとしている。



