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「特別市」構想に再び脚光 指定都市と都区制度の限界に挑む大都市制度改革

ステークホルダーVOICE 地域社会
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特別市構想に再び脚光

総務省の地方制度調査会の下に設置された「大都市における行政課題への対応に関するワーキンググループ」は、2025年6月、指定都市や都区制度を超える新たな制度として「特別市」構想の検討を提言する報告書(案)を取りまとめた。報告書は、人口減少や東京一極集中、広域行政ニーズの複雑化といった課題を背景に、大都市制度の抜本的な見直しの必要性を訴えている。

 

指定都市と都区制度の見直し機運

報告書によれば、現在の大都市制度には、東京都内の23特別区に適用される「都区制度」と、横浜市や大阪市などに適用される「指定都市制度」が並立している。しかし近年、都市の実態が行政区域を超えて拡大し、制度の枠組みがその変化に追いついていないという課題が浮上している。

特に、東京圏では埼玉・千葉・神奈川にまたがって人口が集中し、都区制度と指定都市制度の混在が「都市としての一体性」に矛盾を生んでいるとされる。報告書では、都市圏の社会経済的な実態と行政区分の不整合が制度上のボトルネックになっていると指摘した。

新制度「特別市」とは何か

「特別市」とは、政令指定都市を都道府県から分離し、広域行政の機能を備えた新たな一層制の地方自治体とする構想である。現在のような都道府県と市町村による二層制を超え、権限や税源を集中させることで、いわゆる「二重行政」の完全解消を目指す。

制度が実現すれば、住民にとっては窓口の一本化やサービスの効率化が期待される。例えば川崎市や横浜市では、医療・福祉・防災・都市計画などの分野で県と市の役割が複雑に分かれており、調整に時間とコストを要しているのが現実だ。

 

それでも残る「越えられぬ壁」

一方で、「特別市」制度には多くの課題がある。最大の懸念は、道府県からの分離によって残存する県の行政能力が低下することだ。医療計画や防災、警察など広域機能を都道府県単位で維持できるかは疑問視されており、厚生労働省や警察庁からも慎重な見解が出されている。

また、住民自治の観点でも課題は残る。特別市内の「区」にどこまで代表性を持たせるか、公選の区長を置くのか否かなど、制度設計には繊細なバランス感覚が求められる。

東京圏の課題が制度改革を後押し

報告書では、高齢化と人口集中が進む東京圏において、とくに介護や保育、防災、交通といった分野で広域行政の調整が急務とされている。たとえば、特別養護老人ホームの整備では、特別区が自区内に土地を確保できず、他県に施設を設置する例も増えている。

また、マンションストックの過半数が東京圏に集中し、空き家も増加傾向にあるなど、都市特有の課題が浮き彫りになっている。こうした事情も、制度見直しの議論を後押ししている。

 

国と地方の調整、住民投票の要否も論点に

仮に「特別市」が制度化されれば、国による法整備が必要となる。報告書では、都道府県の分割を伴うため、国会の承認や住民投票を必須とすべきだと指摘しており、法制度上の整合性も議論の焦点となりそうだ。

特別市が現実になるには、「都市と非都市の格差拡大」「地域自治体との軋轢」「国全体の統治構造への影響」といった反対論も乗り越える必要がある。

問われるのは、都市の未来構想

 

報告書はあくまで「方向性」の提示にとどまり、制度導入は今後の検討課題とされている。しかし、大都市にとって今の制度が最適解かどうかを問う根源的な問いかけは、今後の地方制度改革において無視できない。

都市が担うべき役割とは何か。誰のための行政で、何のための自治なのか。制度の枠を超えた真の地方分権の姿が、問われている。

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ライター:

サステナブル情報を紹介するWEBメディアcokiの編集部です。主にニュースや解説記事などを担当するチームです。

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