
産経新聞社は、2024年8月から土曜日の夕刊を休止すると発表した。販売店従業員の労働環境改善が目的で、購読料は据え置く。朝日・毎日も同様の対応を発表している。
産経新聞、8月から土曜夕刊を休止
近畿2府4県の夕刊、今後は平日のみ発行
産経新聞社は6月14日、2024年8月から土曜日の夕刊を休止すると発表した。対象は大阪本社管内で発行されている夕刊で、主に近畿2府4県(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県)に配布されている。
今回の決定は、新聞販売店の従業員の休日確保や労働時間の是正といった労働環境の改善を目的としている。月額購読料(税込4900円)は据え置かれ、今後も朝刊および平日の夕刊は継続して発行されるようだ。
尚、休止の対象となる土曜夕刊に掲載されていた特集記事や連載は、朝刊または平日の夕刊へと振り替えられる予定であり、読者への情報提供体制そのものに大きな変更はないとしている。
新聞業界全体で夕刊廃止が加速
夕刊の発行停止は、産経新聞だけではない。朝日新聞社と毎日新聞社も、同様に8月から土曜日の夕刊を休止すると発表している。背景には共通して、人手不足の深刻化や、販売店スタッフの労働時間削減といった課題がある。
新聞各社の動きからは、紙媒体の夕刊に対する需要の減少や、デジタル化の進展も要因の一つと読み取れる。
配送網維持が困難な地域も
紙媒体の夕刊をめぐっては、ほかの新聞社でも同様の見直しが進んでいる。たとえば日本経済新聞社は、2024年9月末で福岡県および山口県の一部地域における夕刊発行を休止。理由は、配達網の維持が困難であるため。また朝日新聞も、2024年10月1日から静岡県などで夕刊の発行を休止。産経新聞も同時期に富山県での夕刊発行を休止している。
デジタル化による影響
朝刊と夕刊の主な違いは発行時間と内容にある。朝刊は午前中に発行され、前日午後から当日の朝までのニュースを掲載するのに対し、夕刊はその日の午前中に起きたニュースを午後に届ける速報性が特徴である。
また、夕刊は紙面数が少なく、コラムや文化的な記事など「読み物」要素が強い点も特徴だった。しかし、インターネットやスマートフォンによるニュース配信の台頭により、速報性や柔軟な配信が可能となった今、夕刊の意義そのものが問われるようになっている。
今後の新聞のあり方とは
新聞社各社が夕刊を見直す背景には、紙媒体への依存から脱却し、デジタルとの両立を模索する姿勢がある。読者のライフスタイルやニーズが変化する中で、新聞の在り方もまた変わらざるを得ない。今回の産経新聞による夕刊休止も、業界全体の潮流を象徴する一手といえるだろう。