
東京国税局は、競馬などの払戻金計約6億円の所得を申告せず、約2.6億円を脱税したとして、J3アスルクラロ沼津の元会長ら2人を所得税法違反の疑いで東京地検に告発した。
独自の「馬券購入システム」で高額利益
東京国税局は2025年6月11日、サッカーJ3「アスルクラロ沼津」運営会社の元会長・谷強氏(57)=東京都渋谷区=と、貿易会社役員の徳中棟梁氏(71)=新宿区=の2人を、所得税法違反の疑いで東京地検に告発した。2人は、競馬や競艇で得た配当金計約6億1,000万円を申告せず、所得税約2億6,200万円を脱税したとされる。
2人は独自に開発された「馬券購入システム」を利用し、中央競馬や地方競馬、競艇での投票を機械的かつ継続的に行っていた。関係者によると、月に20億円を超える投票額に達したこともあり、1レースで100通り以上の馬券を購入するケースもあったという。
約60名義を使い分散購入 実質の利益は香港の指示役へ
1人あたりの購入額には上限があるため、2人は親族や知人などの約60名義を使用していたとされ、日本中央競馬会(JRA)が定める規約に反する「借名購入」が常態化していた。
また、馬券購入の指示役は香港在住の知人男性で、谷氏と徳中氏は「実行担当」として馬券購入を担っていたとみられる。利益の大半は香港の男性に渡り、2人には約1割が分配されていた。男性は非居住者であるため、日本の税務当局の調査権は及ばず、今回の告発対象から除外された。
修正申告と納税は済ませる
谷氏と徳中氏は、国税局の指導に従い修正申告および納税を済ませたことを明らかにし、「多くの方々にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げる」とのコメントを発表している。
外れ馬券代の経費認定は「例外的」
今回のケースでは、システムを活用して継続的かつ大量に馬券を購入していたことから、配当金は「一時所得」ではなく「雑所得」と判断され、外れ馬券代も経費として認定された模様である。これは、2015年および2017年の最高裁判決において、同様のケースで認められた前例に基づく判断とみられる。
しかし、国税関係者は「一般的なファンに当てはまる例ではなく、極めて例外的」と注意を呼びかけている(読売新聞より)。
谷氏のクラブ運営との関係は?
谷氏は2022年12月から2024年4月まで、アスルクラロ沼津の運営会社「アスルクラロスルガ」の代表取締役会長を務めていた。同氏が代表を務めていた不動産会社は、2023年からクラブのユニフォームスポンサー契約も締結している。
クラブ側は「谷氏の脱税は個人の問題であり、クラブの法人運営や財務処理には一切問題が確認されていない」とコメントしている(クラブ公式発表より)。
参照:谷強前会長に関するご報告(アスルクラロスルガ)