
東京都江戸川区は、75歳以上の高齢者がいる約7万世帯を対象に、今夏の電気代として一律5,000円を給付する方針を示した。熱中症による高齢者の救急搬送が相次ぐなか、エアコン使用をためらう世帯への支援として、所得制限を設けずに実施するのが特徴だ。区はこの事業に約4億8700万円を充てる補正予算案を6月の区議会に提出する。
「気兼ねなくエアコンを」――暑さが命を脅かす現実に自治体が対策
東京都江戸川区は30日、75歳以上の高齢者を対象に、今夏の熱中症対策として電気代の補助金を給付する方針を明らかにした。補助額は1世帯あたり5,000円で、所得制限は設けず、区内に住む対象者を含む約7万世帯が給付対象となる。関連費用として約4億8700万円の補正予算案を6月の区議会に提出する予定だ。
エアコンの使用をためらう高齢者が多い現実を踏まえ、「気兼ねなく冷房を使えるようにする」ことが今回の補助金の趣旨だという。
江戸川区は高齢者の人口比率が高く、区内在住の75歳以上の住民数は年々増加傾向にある。今夏も猛暑が予想されるなか、自治体として早期の支援に乗り出すことで、重症化や救急搬送のリスク軽減を図る構えだ。
熱中症搬送の約4割が75歳以上 冷房利用に慎重な高齢者層
東京消防庁の統計によると、2023年6月から9月までの熱中症による救急搬送者7,993人のうち、実に41.6%が75歳以上の高齢者だった。特に7月と8月に搬送件数が集中しており、発生時間帯は午前11時から午後4時が最も多い。
熱中症は屋外だけでなく、室内でも発症するケースが多く、特に単身高齢者や冷房設備の使用に慎重な層にリスクが集中している。背景には、年金生活などによる節電意識や、「もったいない」「体に悪い」といった個人の価値観もあるとされる。
自治体による電気代支援の波 他自治体への波及も視野に
同様の取り組みは一部の自治体で既に始まっているが、都市部で広範囲に給付を実施する例は珍しい。今回の江戸川区の動きが、他の自治体に波及する可能性もある。特に、厳しい暑さが常態化する中で、自治体ごとの判断と対応が命を左右しかねない状況になりつつある。
区関係者は「命を守ることが何より優先。冷房費の心配なく、安心して暑さをしのいでほしい」と話している。
今後、対象者には7月以降に通知が送付され、給付の具体的な手続きが案内される見込みだ。