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マイナンバーカード普及率8割目前 問われる利便性と“更新忘れ”の壁

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マイナンバーカードの更新
DALL-Eで作成

マイナンバーカードの保有率が国民の8割に迫る中、健康保険証との一体化を目指した「マイナ保険証」に関するトラブルが相次いでいる。とりわけ2025年に集中するとみられる「電子証明書の更新忘れ」は、「マイナカード2025年問題」とも呼ばれ、利便性を損なう大きな懸念材料となっている。

マイナンバーカードの普及状況と利便性

マイナンバーカードは、2016年から全国で交付が開始された。当初は交付率が伸び悩んだものの、2020年から始まった「マイナポイント事業」や「コロナ禍における給付金申請の簡略化」などを契機に、利用拡大が進んだ。総務省の統計によれば、2025年初頭時点で交付済みカード数は約1億枚に達し、国民の約78%が保有しているとされる。

マイナンバーカードは、行政手続きのオンライン化において中核的な役割を担っている。住民票や印鑑証明のコンビニ取得、確定申告時のe-Tax連携、児童手当・医療費控除などの申請の効率化にも寄与しており、「行政のデジタル化による時間・手間の削減」という観点からは、評価する声も多い。

 

マイナ保険証との連携が生んだ混乱

その一方で、カードと一体化した「マイナ保険証」に関しては、利便性よりもトラブルが先行して報道される場面が目立つ。

愛知県の「すぎとう歯科クリニック」によれば、患者の約4人に1人がマイナ保険証を利用しているが、名前の文字化けや読み取り不良などのトラブルが後を絶たない。特に、「髙」「﨑」など異字体を含む名前においては、端末上に黒丸で表示される現象が報告されており、受付職員による手入力の負担が増しているという。

また、最も深刻な課題とされるのが「電子証明書の有効期限切れ」である。マイナンバーカード本体の有効期限が10年であるのに対し、マイナ保険証として利用するための「電子証明書」の期限は5年であり、更新時期がずれる点が混乱を招いている。

 

「2025年問題」 更新忘れによる受診トラブルが急増

2024年12月以降、マイナ保険証に関するトラブルを経験したとする医療機関は全国で87.5%にのぼる(全国保険医団体連合会調査)。なかでも、電子証明書の期限切れを起因とするトラブルは、前回の調査から2倍以上の31%に増加した。

特に2016年~2020年にカードを取得した世代は、2025年度に一斉に更新期限を迎える「マイナカード2025年問題」の渦中にある。対象者は約2800万人にのぼる見込みであり、各自治体の窓口業務への過負荷も懸念されている。

更新通知が紙ではなく「マイナポータル」上での確認を必要とするため、デジタル操作に不慣れな高齢者層においては「知らぬ間に期限切れ」となるケースも相次いでいる。

 

「あれば便利」ではなく「なければ不便」に? 制度設計への疑問

南山大学の実原隆志教授は、「マイナンバーカードがあればできる」ではなく、「なければできない」制度設計が、利用者の不安と反発を招いていると指摘する。

かつての健康保険証は、自動更新や事業主を通じた再発行が一般的であったが、マイナ保険証においては個人が自ら更新状況を把握し、電子証明書の再設定まで行わねばならない。こうした煩雑さが、高齢者やデジタル弱者に対する“逆差別”にもなりかねないとの声もある。

さらに、保険証機能の強制移行にともない、カード未保有者には紙の「資格確認書」が発行されるが、受診時に制約が多く、一貫性に欠けるとの批判も根強い。

 

まとめ:利便性と公平性の両立に向けた再設計を

マイナンバーカードの普及は、行政手続きの簡素化という観点からは一定の成果を上げている。一方で、制度設計上の不整合や、更新手続きにおける不親切さは、利用者の混乱と不信感を生んでいる。

真の意味で「便利なカード」とするには、「持たなくても困らないが、持てば便利」という選択性と、「更新を忘れても受診に支障が出ない」ような仕組みの整備が求められる。今後、国民一人ひとりが安心して利用できる体制の構築が急がれる。

 

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ライター:

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SHOEHORN くつべらマン

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児童養護施設の職員。特に中学~新卒年齢の若者の生活・医療・福祉・自立支援に従事している。勤務時間外では、様々な職業の方へ取材活動を実施しており、大人になる若者たちへ情報を提供している。

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