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令和の米騒動 備蓄米放出の余波 中小スーパー、日本酒、農家、自治体など全国に広がる主食の危機

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令和の米騒動

政府が放出した備蓄米が、全国のコメ市場に激震を走らせている。5kgあたり2000円程度という破格の価格で流通する備蓄米により、従来の在庫米の売れ行きが激減。

中小のスーパーは在庫処理に苦しみ、価格変動の余波は農家の転作、日本酒の値上げ、自治体の地域産業支援にまで波及している。いま日本の「主食」の足元が揺れている。

 

スーパーの店頭に“価格崩壊”が到来

農林水産省は、2022年度産の備蓄米20万トンに加え、2021年度産10万トンを売り渡す方針を示し、そのうち2021年度産分については対象を中小スーパーや販売店にも拡大。卸業者を通さずスーパーなどに直接売り渡す「随意契約」の方式により、5kgで2000円前後の低価格米が店頭に並ぶ構図ができあがった。

岡山市内のある地場スーパーでは、これまで5kg5000円前後で高値発注していたコメが、売れ行きベースで5分の1にまで落ち込んだ。

「高い原価で予約手配しているので、その予約分をどう処理するかが今いちばんの悩みです。政府の対応が見えないなか、現場の判断が一気にひっくり返されることが続いている。現場の人間の気持ちを考えて政策を動かしてほしい」との声が報道されている。

価格差が大きく開いたことで、消費者も混乱している。4人家族の買い物客は「4500円や5000円のコメはもう手が出ない。備蓄米が出回るまでパンでしのぐしかない」と主食の切り替えを余儀なくされている。

 

酒米農家は「利益率」で主食用米へ 文化が揺らぐ現場の葛藤

価格変動の影響は、農業生産現場にも及んでいる。とくに、日本酒の原料となる酒米の生産者は、より高単価で安定的な需要が見込める「主食用米」への転作を迫られている。

佐賀県杵島郡で酒米を栽培してきた農家・古川貴志さん(52)はこう語る。

「去年までの契約数量が減らされたうえ、JAからは主食用米の転作を提案された。品質にこだわってきたつもりだが、今の市況では価格の方が大事になってしまう。酒米は儲からないという現実を突きつけられている」

 

酒蔵の悲鳴 “価値ある酒”を守るために

こうした農家の転作は、日本酒業界をも直撃している。

佐賀県小城市の「天山酒造」では、テレビ信州によると、国内外に販路を広げ、輸出額はこの10年で7倍に成長した。しかし、米の高騰は経営を揺るがす。

「今年の酒米価格は昨年比で1.3~1.4倍、加工用米は1.5~1.6倍になる見込みと聞いている。海外展開もようやく軌道に乗ったのに、このタイミングでの打撃は大きい」と6代目蔵元・七田謙介社長(54)は話す。

値上げを踏み切った蔵元もある。佐賀県唐津市の「小松酒造」では、4月に一升瓶で6%程度の価格引き上げを実施。しかし、3500円を超える商品になると飲食店での扱いが難しくなるといい、売上の先行きには懸念が残る。

「米の値上がり幅からすればこれでも利益は出ない。将来の酒造りを守るためには、苦渋の選択だった」と小松大祐社長(58)。

 

地方自治体にも危機感 「農と酒が消えれば、地域が死ぬ」

事態の深刻さを受け、地方自治体も支援策の検討を始めている。

佐賀県農政企画課の担当者は「農家の転作と酒蔵の原料調達の問題は地域経済の根幹に関わる。観光、飲食、雇用など全体への影響が出る。必要に応じて補助制度も検討したい」と語る。

一方、高知県内のある自治体職員は「備蓄米の放出方針が現場に伝わるまで時間差があり、自治体側は常に後手になる。中央の政策変更が地方を振り回している構図だ」と情報伝達の遅延に不満をにじませた。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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