
春の訪れとともに登山を楽しむ人が増える。しかし、春山は気候が変わりやすく、思わぬトラブルに見舞われることもある。北海道の利尻山で3月19日、登山中の女性2人が視界不良により一時下山できなくなった事例は、その危険性を示している。本記事では、春山登山の際に注意すべき点について詳しく解説する。
登山が人気な理由
登山は年々人気を増している。その背景には以下のような理由がある。
- 自然との一体感:日常生活では味わえない大自然の絶景を楽しむことができる。
- 健康維持・体力向上:有酸素運動としての登山は、心肺機能の向上や筋力の強化につながる。
- ストレス解消:山の中で深呼吸しながら歩くことで、リラックス効果が得られる。
- 達成感・自己成長:登頂することで自信がつき、自己成長を実感できる。
こうした魅力から、多くの人が登山に挑戦する。しかし、その一方で登山には危険も潜んでおり、十分な準備が必要だ。
天候の急変に備える
春山は気温が上昇し雪解けが進む一方、山の上では依然として冬の寒さが残る。特に標高の高い山では、天候が急激に変わることがある。今回の利尻山の事例でも、登頂時は問題なくても、その後の霧で視界不良に陥っている。
対策:
- 登山前に天気予報を必ず確認し、悪天候の兆候がある場合は登山を延期する。
- 山の天候は変わりやすいため、事前に地域の気象情報や山岳予報をチェックする。
- 霧や強風の発生に備えて、ルートを事前に把握しておく。
必要な装備を整える
春とはいえ、山では気温が低く、防寒対策が必要だ。さらに、携帯電話のバッテリー切れや道迷いなど、遭難リスクを下げるための装備も重要となる。
必携品:
- 防寒着(ダウンジャケット、レインウェア)
- モバイルバッテリー(通信手段の確保)
- ヘッドライト・懐中電灯(日が暮れるのが遅くなっても、予期せぬ下山遅れに備える)
- 飲料水・行動食(最低限のエネルギー補給)
- 地図・コンパス・GPS(視界不良時のルート確認)
見落としがちな危険
登山では一般的なリスク以外にも、見落としがちな危険が多く存在する。春特有のものもあるため、注意が必要だ。
① 雪渓の踏み抜きや雪崩
春山では残雪が緩み、踏み抜きや雪崩のリスクが高まる。
- 雪の下に隠れたクラック(割れ目)に足を取られることがある。
- 午後は雪が緩み、滑落の危険が増す。 対策:
- 雪渓を歩く際はストックで足元を確認する。
- 斜面を横断する際は慎重に進む。
② 低体温症
春でも風が強い山頂や稜線では体温が奪われやすい。
- 汗をかいた後に冷えると体温調節が難しくなる。 対策:
- 休憩時には防寒着を着用する。
- 汗をかいたら着替えをする。
③ 道迷い
春は登山道がぬかるみ、雪で隠れることもある。 対策:
- GPSアプリを活用し、事前にルートを確認する。
登山事故が多い季節はいつか?
登山事故は年間を通して発生するが、特に 春(3~5月)、夏(7~8月)、秋(9~11月) に多い傾向がある。
春(3~5月):油断による事故が多発
- 雪解けによる踏み抜き、道迷い、低体温症。
夏(7~8月):熱中症と雷事故が増加
- 水分補給不足、雷、滑落事故。
秋(9~11月):日没の早さに注意
- 低体温症、道迷い、滑落。
冬(12~2月):雪山登山の高リスク
- 低体温症、吹雪、雪崩。
事前の計画と緊急時の対応
登山前には計画を立て、万が一に備えた行動指針を決めておくことが重要だ。今回の事例のように、途中で避難小屋を活用するのも有効な手段となる。
対策:
- 登山ルートを事前に把握し、無理のない計画を立てる。
- 家族や友人に登山計画を伝え、万が一の際にすぐに対応できるようにする。
- 遭難した場合は無理に動かず、安全な場所で待機し、可能であれば警察や救助隊へ連絡する。
まとめ
登山は自然を満喫しながら健康維持やストレス解消ができる魅力的なアクティビティだ。しかし、季節ごとに異なるリスクがあり、適切な準備と装備なしでは危険が伴う。特に春の登山では 天候の急変、残雪、低体温症、道迷い に注意が必要だ。安全な登山のために、事前準備と慎重な行動を心がけよう。