
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、2025年春をめどにパーク入口のチケット売り場を完全閉鎖する方針を発表した。来場者のオンライン購入が主流になりつつある中、混雑緩和や運営の効率化を狙った動きとみられる。世界的に進むテーマパークのデジタル化の流れの中で、USJがどのような戦略を進めるのか、背景や今後の影響を詳しく解説する。
USJのチケット売り場閉鎖の理由と背景
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、2025年春をめどにパーク入口のチケット売り場をすべて閉鎖する方針を発表した。公式サイトでの販売が主流となる中、混雑緩和や人件費削減が背景にあるとみられる。この決定は、来場者の購買行動の変化を受けたものであり、オンライン購入が一般化しつつある状況を反映している。公式サイトやコンビニエンスストアのローソン、旅行会社、提携ホテルなどを通じてチケットを購入することは引き続き可能である。
USJが進めるデジタル戦略と運営効率化
USJは近年、公式の「WEBチケットストア」を強化し、オンライン販売を推進してきた。2024年2月には販売サイトをリニューアルし、より直感的で使いやすい構造へと変更した。希望するチケットを簡単に検索・購入できる仕組みを導入し、入場券と人気アトラクションの優先入場券を一つのQRコードで管理できる機能も追加された。新型コロナウイルスの影響を経て来園者数が回復する中、パーク入り口の混雑緩和が課題となっており、今回の決定はその対策の一環といえる。さらに、オンライン販売の推進は運営コスト削減の側面も持ち、販売データの活用によるマーケティング戦略の強化も視野に入れている。
海外テーマパークと比較するUSJのオンライン化
USJのオンライン販売強化は、海外のテーマパークのデジタル戦略とも一致している。米国のディズニーパークでは「ディズニー・ジェニープラス」や「モバイルオーダー」などのシステムが導入され、チケット管理やアトラクション予約、さらにはレストランの事前注文まで完全にデジタル化されている。また、ユニバーサル・オーランドでは公式アプリを活用したモバイルチケットの導入が進められ、紙のチケットの使用をほぼ撤廃し、来場者の利便性向上を図っている。
こうした海外の成功事例を参考に、USJも独自のオンライン販売戦略を進めている。特に、デジタルチケットを活用した来場者の行動分析や、AIを用いた混雑予測技術の導入などが今後の課題として浮上している。来場者の滞在データを活用し、アトラクションの待ち時間予測や、個別に最適なプランを提案するシステムの開発も検討されている。さらに、オンライン決済の多様化や、非接触型のパーク内サービスの拡充など、デジタル化の波はチケット販売だけでなく、USJの運営全体に影響を及ぼしつつある。
デジタル化がもたらす利便性と課題
オンライン販売の拡大により、事前にチケットを購入し、スムーズに入場できる利便性が高まる一方で、インターネットに不慣れなシニア層や、スマートフォンを所有していない層にとってはハードルが高くなる。USJはこうした課題に対応するため、電話での購入サポートや、コンビニなどでのチケット購入オプションの拡充を検討している。また、訪日外国人観光客の増加を受け、多言語対応の強化や、紙チケットが必要な層への代替策の導入も求められる。デジタル化の進展が利便性向上をもたらす一方で、来園者ごとの対応策が今後の課題となる。
USJの未来戦略とテーマパーク業界のデジタル化
USJのチケット売り場閉鎖は、テーマパーク業界全体のデジタル化の転換点となる可能性が高い。すでに東京ディズニーリゾートでは現地でのチケット販売を廃止し、オンライン購入が主流となっている。USJもこれに続く形で、チケット販売を完全にオンライン化することで運営の効率化と利便性の向上を図る方針だ。今後は、新たなチケット管理機能や購入者向けの特典強化が期待されるほか、パークアプリの活用強化や、AIを活用したパーソナライズド・チケット販売システムの導入が検討される可能性がある。デジタルシフトが加速する中で、テーマパーク業界全体がどのように変革を遂げるのかが注目される。