
フジテレビの広告収入が前年同月比で約9割減少する見通しとなった。1月の会見以降、スポンサー離れが進み、取引社数は激減。影響の拡大に伴い、同社は組織改革や経営戦略の見直しを迫られている。
CM差し止め企業300社超、広告収入9割減の現実
フジテレビと親会社フジ・メディア・ホールディングス(HD)は2月27日、定例取締役会後に記者会見を行った。清水賢治社長は、広告収入の大幅減少について「前年比で約10%弱の水準にまで落ち込んでいる」と述べ、厳しい経営状況を認めた。
フジテレビによると、1月末時点でCMをACジャパンに差し替えた企業は311社に上り、2月25日現在で取引のあるスポンサーはわずか72社にとどまる。通常は400社以上の企業と取引していることから、広告収入が約9割減少する異例の事態となっている。
この影響を受け、フジ・メディアHDは2025年3月期の連結決算業績予想を下方修正。広告収入が当初見通しから233億円減少し、純利益は従来予想の290億円から98億円に引き下げられた。
スポンサー離れの背景――問題視された経営対応
広告主の離反が加速した背景には、1月の会見での経営対応が大きく影響しているとみられる。フジ・メディアHDは1月17日の会見で、一連の問題に対する説明を行ったが、スポンサー企業の信頼を回復するには至らなかった。その後、企業側からのCM差し替えや出稿停止が相次いだ。
また、フジテレビの広告収入に依存している系列局にも影響が広がっており、清水社長は「非常に影響が出ているので、大変申し訳ない」と謝罪した。
放送休止に追い込まれた番組
スポンサー離れの影響は番組編成にも及んでいる。フジテレビは2月21日、恒例の大型特番「FNS27時間テレビ2025」の放送を見送ると発表した。また、1月31日には、4月に放送予定だった「FNS歌謡祭」春スペシャルの中止も決定された。
さらに、2月17日には、爆笑問題・太田光がナレーションを務める『ぎりぎりをせめるので続くだけやります法律お笑い』(通称『ぎり笑』)の放送休止が発表された。公式サイトでは「次回放送日は未定」とされ、TVerなどの配信サービスでも視聴できなくなっている。フジテレビは休止の理由を明らかにしておらず、視聴者の間で憶測が飛び交っている。
今後の展望――経営再建のカギはどこに?
フジテレビは、この危機を乗り越えるためにいくつかの対策を講じる必要がある。スポンサー企業との信頼関係の再構築が急務となる。企業側の不信感を払拭するため、透明性のある経営姿勢を示し、対話を重視することが求められる。
番組の質向上と視聴者の支持獲得も重要だ。視聴率の回復なくしてスポンサーの復帰は難しい。良質なコンテンツを提供し、視聴者の支持を得ることが急務となる。
また、デジタル広告収益の拡大も課題の一つだ。テレビ広告市場が変化するなか、YouTubeや動画配信サービスとの連携を強化し、新たな収益モデルを模索する必要がある。
さらに、組織改革と経営体制の見直しも進められている。フジ・メディアHDは取締役相談役の日枝久氏が取締役会の提言を行う経営諮問委員会を辞任したと発表。今後、役員体制のコンパクト化と若返りを進める方針を示している。
フジテレビの今後の動向は、メディア業界全体にも影響を及ぼす可能性が高い。スポンサーとの関係修復、視聴率向上策、組織改革など、複数の課題を乗り越えることができるか、引き続き注目される。