KFCの本社がケンタッキー州からテキサス州へ移転

米ファストフード大手KFCの本社が、創業の地であるケンタッキー州を離れ、テキサス州に移転する。親会社ヤム・ブランズは18日、KFCのアメリカ本社をケンタッキー州ルイビルからテキサス州プラノに移転すると発表した。ピザハットの本社も同様にプラノへ移されるが、タコベルとハビット・バーガーの本社はカリフォルニア州アーヴァインに据え置かれる。

この決定により、KFCの従業員約100人とリモートワーカー数十人が移転対象となり、会社からの移転支援を受けることになる。

移転の背景にあるテキサス州の魅力

近年、テキサス州は企業の本社移転先として人気を集めている。税制面での優遇措置が手厚く、法人税がゼロであることに加え、人件費や物価が比較的低いことが理由の一つだ。ヤム・ブランズのデイヴィッド・ギブスCEOは、「この移転は、持続可能な成長を促し、顧客、従業員、フランチャイズオーナー、株主により良いサービスを提供するためのもの」と説明した。

米商業不動産会社CBREの報告によると、テキサス州オースティンやダラスなどは、ビジネス環境の整備が進んでおり、企業誘致に成功している。実際に、テスラやキャタピラー、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ（HPE）など、多くの大手企業がテキサス州へ本社を移している。

ケンタッキー州の反応 創業の地を離れることへの批判

KFCの本社移転に対し、ケンタッキー州からは反発の声が上がっている。ケンタッキー州のアンディ・ベシア知事は、「この決定には失望している。創業者もきっと同じ気持ちだろう」と述べた。

KFCは、カーネル・サンダース氏が1930年にケンタッキー州コービンで創業したブランドであり、その歴史的背景からも同州と強い結びつきを持っている。現在でもKFCのブランドロゴには、サンダース氏の顔が描かれており、ケンタッキー州の名前を前面に打ち出している。

AP通信によると、「ケンタッキー・フライド・チキン」の名称を持つ企業がテキサス州に移転することに対し、州民の間でも困惑が広がっている。地元メディアの一部は、「KFCがTFC（テキサス・フライド・チキン）になるのか？」と皮肉る記事を掲載した。

企業の本社移転が進むアメリカの現状

新型コロナウイルスのパンデミック以降、アメリカでは企業の本社移転が加速している。リモートワークの普及により、従来のオフィス環境を維持する必要性が減少したことが影響している。

特に、テキサス州はそのビジネスフレンドリーな環境が評価されており、企業誘致に成功している。トヨタ自動車も、アメリカ本社をカリフォルニア州からテキサス州プレイノに移転した。今回のKFCの移転も、こうした流れの一環といえる。

移転後のKFCはどう変わるのか

KFCは今後、テキサス州でどのように事業展開を進めるのか。企業の成長戦略として、従業員とブランド間のコラボレーション強化を目的の一つとしている。また、移転により新たなビジネスチャンスを模索するとみられる。

一方で、ケンタッキー州にはKFC財団が運営するオフィスが残され、同州での事業継続も一定程度維持される見込みだ。しかし、本社機能が移転することで、ブランドのルーツとの結びつきがどのように変化するのかは、今後の動向を注視する必要がある。

まとめ ケンタッキー州を離れるKFCの今後に注目

KFCの本社移転は、企業の成長戦略の一環として実施されるものだが、創業の地を離れる決定には賛否が分かれている。テキサス州の税制優遇やビジネス環境の整備が、今後の事業拡大にどのような影響を与えるのかが注目される。一方、ケンタッキー州側の反発やブランドのアイデンティティ維持の課題も浮き彫りになっている。

今回の移転がKFCの未来にどのような影響を及ぼすのか、引き続きその動向が注目される。