経済アナリストとして活躍した森永卓郎さんが1月28日、自宅で亡くなった。67歳だった。森永さんは2023年末にがんの診断を受けた後も、経済に関する発信を続け、精力的に活動していた。
長男の森永康平さんは「闘病中は本当に多くの方から応援のメッセージをいただき、本人だけでなく私たち家族も勇気づけられていました」とコメントを発表した。また、「父の闘病や最期の様子について、いずれ皆様にお伝えできればと思います」と語り、感謝の意を表した。葬儀は近親者のみで家族葬として執り行われる予定だ。
森永卓郎さんの功績と遺産
森永さんは経済アナリストとして、テレビやラジオ、雑誌など多くのメディアに出演し、経済問題をわかりやすく解説する識者として知られた。軽妙な語り口と親しみやすいキャラクターで、経済という一見難解なテーマを一般市民にも伝わりやすい形で発信し続けた。テレビ朝日の「ビートたけしのTVタックル」や、NHKの討論番組、さらにはバラエティ番組にも出演し、経済アナリストの枠を超えた幅広い活動で多くの人々に親しまれた。
特に日本経済の行方や国の財政政策についての議論では、鋭い分析を展開しながらも、庶民の目線に立った提言を行い続けた。経済評論だけでなく、オタク文化や恋愛論など幅広いテーマを取り上げることで、老若男女問わず幅広い層から支持を集めた。
ここ近年は、著書『ザイム真理教』(フォレスト出版)を通じて財務省の政策が日本経済に与える悪影響を鋭く分析し、多くの反響を呼んだことが思い出される。同書では増税や社会保障費削減が国民生活に及ぼす影響を指摘した。
また、彼の発言や分析は、政策立案者や一般市民に「経済を自分ごととして考える視点」を与え続けてきた。
森永さんは2023年末に「すい臓がん(ステージ4)」と診断されたが、その後「原発不明がん」とされ、闘病生活を続けながらも社会への発信をやめることはなかった。昨年11月には「要介護3」と診断されながらもラジオやイベントに出演し、8月には「31日間で13冊の本を書き上げた」と語るなど、驚異的なエネルギーを見せていた。
死の前日までラジオ出演するなど、最後の最後まで使命をもって仕事をし続けた姿には、森永さんの主張に否定的な人たちも認めざるを得ない精神力の持ち主だったと言えるだろう。
SNSや著名人からの追悼の声
SNS上では、「最後まで精一杯生き抜いた姿に感動した」「病と闘いながらも社会に希望を与えた」といった声が相次いでいる。また、多くの著名人が追悼の意を表明している。
ジャーナリストの堀潤氏は「森永卓郎さん、本当にありがとうございました。どうか安らかに」とコメントした。元財務官僚で経済学者の高橋洋一氏は「昨日話したばかりなのに」とその突然の訃報に驚きを隠せない様子を見せた。
タレントのラサール石井氏は「最後まで命懸けで財務省と闘い、経済のカラクリを訴え続けた」とその功績を称賛し、「その道を閉ざさず、私たちも後に続く」と語った。また、ジャーナリストの田原総一朗氏は「よく意見はぶつかったが、ぶつかることで多くを学ばせてもらった」と、その存在感を偲んだ。
作家の乙武洋匡氏も「高校の先輩でした。気にかけていただいたことに感謝しています」と別れを惜しんだ。漫画家の倉田真由美氏は「末期がんでもずっとお元気だった」と語り、長年の交流を振り返りつつ哀悼の意を表した。
日本経済と社会に残した足跡
森永卓郎さんは経済アナリストとしての深い知識と情熱をもって、多くの人々に影響を与えた。彼の発信を通じて、経済を「自分ごと」として考える重要性を学んだという人は多いだろう。
森永さんが遺した提言や分析は、今後も日本社会で生き続ける。最期まで闘病と向き合いながらも、社会にメッセージを送り続けたその姿勢は、多くの人々の心に刻まれている。森永さんの戦ってきた姿を思い返し、改めて経済を考える契機としたい。