
NASAの有人月周回ミッション「アルテミスII」は4月6日、オリオン宇宙船が月の裏側を通過し、地球から252,756マイル、約40万6771キロの最遠地点に到達した。これは1970年のアポロ13号が記録した248,655マイルを上回る新記録で、月面への最接近も4,067マイル、約6545キロまで迫った。4月1日に打ち上げられた10日間の飛行は、SLSとオリオンによる初の有人アルテミス飛行として、深宇宙での運用能力を本番条件で確かめる段階に入った。
記録更新はNASAが時刻付きで公表
NASAの公式更新によると、乗組員のリード・ワイズマン、ビクター・グローバー、クリスティーナ・コック、ジェレミー・ハンセンの4人は、米東部時間4月6日午後1時56分にアポロ13号の最遠記録を更新し、同日午後7時2分に最大距離へ達した。
その後、オリオンは月の裏側に回り込み、一時的な通信断を経て「Eathrise(地球の出)」を観測。
今回の意義は、人類初の月裏通過ではなく、NASA自身が別の公式記事で示している通り、1972年のアポロ17号以来となる50年以上ぶりの有人月フライバイ(すぐ近くを通り抜ける飛行)にある。
月裏側の観測は30地点、オリエンターレ盆地などを重点撮影
今回のフライバイでは、NASAの科学チームが事前に選んだ30の月面観測目標が割り当てられた。
観測対象には、月の表裏にまたがる巨大クレーターのオリエンターレ盆地や、月裏側のヘルツシュプルング盆地が含まれる。
NASAは、乗組員が80-400ミリと14-24ミリのレンズを付けた手持ちカメラを準備し、高解像度の月面撮影を実施すると説明していた。
加えて、太陽光に照らされた月裏側の約20%が視界に入り、オリエンターレ盆地やピエラッツォ・クレーター、オーム・クレーターなど、一部の地形は肉眼での観測史のうえでも極めて珍しい機会になった。
「Integrity」「Carroll」は正式命名ではなく仮称提案
NASAの飛行6日目更新では、乗組員はオリエンターレ盆地の近くにある無名クレーター2つについて、「Integrity」と「Carroll」という仮称を提案したとされる。
ただし、これは正式決定ではない。NASAは、ミッション終了後に国際天文学連合へ名称案を提出すると明記しており、現時点では“名付けた”ではなく“提案した”と書くのが正確である。
月面着陸は2028年初頭のアルテミスIVが目標
アルテミスIIは今後の月面探査に向けた重要な節目であることは間違いない。
NASAの2026年3月更新版では、アルテミスIIIは2027年の低軌道ランデブー・ドッキング実証ミッションで、最初のアルテミス月面着陸はアルテミスIVとして2028年初頭を目標にしている。
今回のアルテミスIIの意味は、月面着陸そのものの直前段階というより、深宇宙で有人機を安全に運用し、今後の月面・火星探査の基盤を固める飛行試験にある。
帰還は4月10日、NASAはライブ映像を継続配信中
NASAは、アルテミスIIのスプラッシュダウンを米東部時間4月10日午後8時7分ごろ、サンディエゴ沖の太平洋で予定している。
NASA Liveの案内では、オリオンからのライブ映像と定例ブリーフィングが引き続き視聴可能で、月フライバイ通過後もミッション進行を追える状態にある。
今回のアルテミスIIでは、オリオンが月の裏側を回り、通信断と再取得、観測、帰還までを一連の手順としてこなせるかどうかが重要だ。



