
2026年2月、歌手の今井美樹が約8年ぶりとなるオリジナルアルバム『smile』を発表した。デビュー40周年の節目を飾る作品であり、5月からは全国ツアーも予定されている。久々の新作にファンの期待は高まり、テレビ出演やインタビューも相次いだ。
しかし、アルバムタイトルが公表されると、音楽ファンの一部で思わぬ既視感が広がった。
──「あのタイトルを思い出す」
そう語られた先にあったのは、ロック歌手山下久美子の名前だった。
約30年前、日本の音楽界を揺るがした“ある恋”が、再び語られ始めている。
8年ぶりアルバム『smile』 布袋寅泰の一言から生まれたタイトル
2026年2月11日、今井美樹はニューアルバム『smile』を発売した。
制作は約1年前から始まったが、レコーディングの直前、今井は高熱から声帯炎を発症し、1か月近く声を出せない状態が続いたという。
関係者によると、その期間は筆談でコミュニケーションを取る日々だった。小さなホワイトボードを手に、声を失った歌手がスタジオの隅でメモを書き続ける──そんな時間が続いたという。
ようやく声が戻り、アルバムのジャケット撮影が行われた日。
その場で、夫でギタリストの布袋寅泰がふと声をかけた。
「笑ってね」
その一言がアルバムタイトル『smile』のきっかけになったとされる。
夫婦で制作に関わった作品。
デビュー40周年の節目。
そして8年ぶりのアルバム。
本来ならば音楽の話題だけで語られても不思議ではないタイミングだった。
しかし、そこに別の文脈が重なった。
山下久美子『SMILE』との偶然 30年前の恋の記憶
一部で話題になっているのはタイトルそのものだ。
なぜなら、布袋寅泰の元妻であり、今井美樹の元親友でもあった山下久美子が、1997年にアルバム『SMILE』を発売しているからだ。
このアルバムがリリースされたのは、布袋との離婚直後だった。
1990年代半ば。
今井美樹と布袋寅泰は楽曲制作を通じて急接近していった。
当時、布袋は山下久美子と結婚しており、二人はロック界きってのおしどり夫婦と呼ばれていた。
やがて不倫関係が報じられ、1997年に布袋と山下は離婚。
そして1999年、布袋と今井は結婚した。
当時、今井と山下は私生活の悩みを相談し合うほどの関係だったとも伝えられ、世間はこの出来事を「略奪愛」と呼んだ。
それから30年近い時間が流れた。
それでもなお、この出来事は完全には忘れられていない。
だからこそ、『smile』というタイトルは、一部の人々に別の記憶を呼び起こしたのである。
山下久美子の現在 “ロックの女王”は今もステージに立つ
一方で、騒動のもう一人の当事者である山下久美子は、現在どのような活動をしているのか。
1980年代、山下久美子は“ロックの女王”と呼ばれ、日本の女性ロックシンガーの象徴的存在だった。
代表曲には「バスルームから愛をこめて」「赤道小町ドキッ」などがあり、そのハスキーな歌声とエネルギッシュなステージで人気を集めた。
布袋との離婚後、2002年には自伝『ある愛の詩』を出版。
そこでは、離婚当時の心境や人生の転機について率直に語っている。
その後も音楽活動は続けており、ライブを中心に活動を継続。
近年も新作リリースやコンサート出演など、アーティストとしての歩みを止めてはいない。
華やかなメディア露出は多くないものの、根強いファンに支えられながらステージに立ち続けている。
かつての騒動から長い年月が過ぎた今、山下は“過去の物語”ではなく、一人のロックシンガーとしてキャリアを重ねている。
「布袋の話はしたくない」発言と世間の違和感
今回のアルバムプロモーションでは、今井美樹がテレビ番組に出演する機会も増えている。
ある情報番組では、今井がこう語る場面があった。
「布袋さんの話はあまりしたくないんです」
夫婦としてではなく、音楽家として尊敬している存在だという理由だった。
しかしその直後、アルバム制作の裏話として布袋との関係性にも触れた。
この発言がSNSで議論を呼んだ。
「話したくないと言いながら話している」
「どうしても過去を思い出してしまう」
こうした声が上がった背景には、1990年代の出来事がいまも記憶として残っている現実がある。
それでも歌は残り続ける
もっとも、音楽そのものへの評価は別だという声も多い。
今井美樹は1986年に歌手デビュー。
1991年の『PIECE OF MY WISH』、1996年の『PRIDE』はいずれもミリオンセラーとなり、日本のポップス史に残るヒット曲となった。
現在もその透明感ある歌声は多くのファンに支持されている。
テレビ番組ではシンガーソングライターのさだまさしが、今井の歌声についてこう評している。
「都会的な透明感があって、女性が求める女性像が全部出ている」
長年のキャリアは、歌手としての実力を証明していると言えるだろう。
40周年の節目 過去よりも音楽が語られるのか
デビュー40周年。
そして8年ぶりのアルバム。
本来なら、キャリアの集大成として祝福されるタイミングでもある。
だが芸能界では、過去の出来事が思わぬ形で再び語られることもある。
今回の『smile』というタイトルは、その記憶を呼び起こすきっかけになってしまった。
ただし、最終的に評価を決めるのは作品そのものだ。
5月から始まる全国ツアー。
そこで披露される新曲がどのように受け止められるのか。
40年のキャリアを持つ歌手にとって、
過去の物語よりも、いま鳴らす歌こそが本当の答えになるのかもしれない。



