
青いバッグが街角から消える。
北欧フィンランド発のフードデリバリーサービスWoltは2月25日、日本でのサービスを2026年3月4日で終了すると発表した。3月5日以降、アプリとウェブサイトからの注文はできなくなる。
2020年3月、アジア初進出の地として選ばれたのは広島だった。あれから6年。コロナ禍の追い風を受けて拡大した市場は、いま静かに淘汰の局面へと移りつつある。
コロナ禍の希望から撤退へ 広島で始まった6年
「こんにちは、Woltです」
配達員が店先で声をかける。マスク越しのやり取りが当たり前だった2020年春。外出自粛が続くなか、デリバリーは飲食店にとって“命綱”でもあった。
Woltは2014年にフィンランドで創業。効率的な配達アルゴリズムと手厚いカスタマーサポートを強みに急成長し、2022年には米国のDoorDasが買収。グローバル展開を加速させた。
しかし今回、DoorDashは日本を含む複数国からの撤退を発表。財務への大きな影響はないと説明しているが、日本市場は“選ばれなかった”。
なぜWoltは日本撤退? 値下げ競争と構造問題
テレビ新広島によると、Woltは2025年4月から広島で「店頭価格デリバリー」を導入。手数料を見直し、利用者が店舗と同じ価格で注文できる取り組みを進めていた。
さらに、配達料・サービス料無料のタイムセールも展開。物価高のなか、利用ハードルを下げる戦略だった。
だが、日本の外食単価は比較的安く、質も高い。配達コスト、人件費、広告費を上乗せすると利益は薄い。店舗側は30%前後の手数料負担を抱え、プラットフォームは集客と補助金的施策で消耗する。
一方で、Uber Eats、出前館、menuは依然として継続。さらに韓国Coupang傘下の「Rocket Now」も攻勢を強めている。
価格を下げ続けるか、利益を守るか。デリバリー市場は、すでに体力勝負の段階に入っている。
飲食店・配達員への影響 現場の声
広島市内の飲食店関係者は「店頭価格施策後、利用は増えた」と話す。デリバリー経由で来店につながるケースもあったという。
配達員の間では、Woltのサポート体制を評価する声も少なくない。一方で「複数プラットフォーム登録が生存戦略」との現実的な見方も広がる。
市場が縮小するのではなく、プレイヤーが絞られていく。残るのは数社という見方が強い。
フードデリバリー戦国時代は終わるのか
過去にはfoodpandaも撤退。スタートアップのChompyもデリバリー事業から転換した。
拡大期から選別期へ。
青いバッグが消えた後、街はどう変わるのか。
配達員はどこへ向かうのか。
飲食店はどのプラットフォームを選ぶのか。
フードデリバリーは単なる“便利なアプリ”ではない。地域経済と生活様式を変えたインフラの一つだ。その再編は、私たちの暮らし方の再定義でもある。
今後の焦点
・値下げ競争はどこまで続くか
・2〜3社体制に収斂する可能性
・配達員の安全対策と待遇改善
・持続可能な手数料モデルの構築
市場は成熟期へ向かう。その過程で消える名前もあれば、残るブランドもある。Woltの撤退は終わりではない。
フードデリバリー第二章の始まりだ。



