
2025年1月期、日本テレビの冬ドラマが軒並み苦戦している。かつて12年連続で年間個人視聴率三冠を誇った“王者”の面影は薄く、ゴールデン・プライム帯の連続ドラマはいずれも低空飛行を続ける。
なぜ、ここまで崩れたのか。
背景には、キャスティングの停滞、長すぎるタイトル戦略、そして実力派プロデューサーの相次ぐ退社がある。さらに、制作現場に深い影を落とした「セクシー田中さん」をめぐる問題も無視できない。
日テレの冬ドラマ総崩れは、単なる一時的不振なのか。それとも、地上波ドラマの構造的転換点なのか。
静まり返った制作フロア 「王者」日テレに走った異変
照明が落ち、モニターの前にスタッフが集まる。放送翌朝の会議室に漂うのは、かつての高揚感ではなく、重たい沈黙だったという。
2025年1月期、日本テレビの冬ドラマは、ゴールデン・プライム帯で軒並み低迷した。12年連続で年間個人視聴率三冠を誇った局とは思えない数字が並ぶ。
水曜22時「冬のなんかさ、春のなんかね」(主演・杉咲花)は3%台前半、土曜21時「パンダより恋が苦手な私たち」(主演・上白石萌歌)も回を追うごとに数字を落とした。日曜22時30分「パンチドランク・ウーマン」に至っては、2%台まで沈んでいる。
プライム帯ドラマの“合格点”が9%とされる中、この数字は単なる不振ではない。現場では「なぜ、こうなったのか」という問いが、繰り返し投げかけられている。
キャスティングに漂う“時間のズレ”
低迷の要因として、まず挙げられるのがキャスティングだ。主演陣はいずれも実力派だが、代表作の多くは2000年代後半から2010年代初頭に集中する。
一方、ライバル局はどうか。テレビ朝日は30代前半の旬な俳優を前面に押し出し、TBSは日曜劇場で話題性と安定感を両立させている。
「数字が取れた過去の成功体験から抜け出せていない」。そんな指摘が、日テレ関係者の口から漏れる。
長すぎるタイトルが奪う“初動”
もう一つ、静かに効いているのがタイトル問題だ。
今期の日テレドラマはいずれもタイトルが長く、ラテ欄1行に収まりにくい。略称も定着せず、視聴者の記憶に残りにくい構造になっている。
かつて日テレを支えた『家政婦のミタ』『ごくせん』は、短く、強かった。新聞を開いた瞬間に目に飛び込み、「とりあえず見てみるか」と思わせる力があった。今期作品には、その“入口”が欠けている。
決定打はプロデューサーの流出
しかし、最も深刻なのは人材の問題だ。
『3年A組』『校閲ガール』を手がけた西憲彦氏、若手の旗手と呼ばれた福井雄太氏ら、日テレのドラマを牽引してきたプロデューサーは、配信プラットフォームや外部へと移った。
さらに、『セクシー田中さん』をめぐる原作対応問題は、制作現場に長い影を落としている。挑戦的な企画を出しづらくなり、「無難」に寄る空気が広がったという証言もある。
良い役者は、良いプロデューサーに集まる。その循環が断ち切られたとき、作品の熱量は一気に下がる。
再びささやかれる「ドラマ不要論」
日テレには、かつて「ドラマはコストがかかるだけ」という議論があった。バラエティ重視へ舵を切るべきだ、という声だ。
その空気を変えたのが『家政婦のミタ』だった。最終回40%という数字が、「ドラマは局の顔になり得る」ことを証明した。
今、その成功体験が、逆に重荷になりつつある。冬ドラマの総崩れは、再び社内に「ドラマは割に合わない」という議論を呼び戻しかねない。
それでも、ドラマは終わらない
社内で期待を集めているのは、10月期予定の「俺たちの箱根駅伝」だという。ただし、一本のヒットですべてが好転するほど、状況は単純ではない。
問われているのは、視聴率至上主義から一歩引き、誰に、何を、どう届けるのかという根本設計だ。
王者・日テレは、いま試されている。



