「安倍さんを撃つのは、ずれている」被告が語った“本音”

医師によると、山上被告は鑑定中、手製銃で安倍元首相を撃った行為について「ここまで大ごとになるとは思わなかった」と語ったという。
さらに、「安倍さんを撃つというのは、ずれている」と述べ、犯行の正当性を見失いながらも突き進んだ当時の葛藤がにじんでいた。

医師が「では、誰なら“ずれていない”のか」と問い返すと、被告はためらいなく旧統一教会の韓鶴子総裁の名を挙げたという。
その一言には、自身の人生を大きく変えた教団問題への固執と怒りが色濃く残っていた。

“奈良なんか、マジか”　運命を感じたという演説予定

犯行直前の心境についても、新たな証言があった。岡山での襲撃を断念した帰り道、山上被告は新幹線の車内で安倍元首相の奈良での応援演説を知ったという。
「奈良なんか、マジか。運命的なものを感じた」。医師は被告がそう語ったと証言した。

奈良という地名に反応した理由を被告は詳しく語っていないが、生まれ育った地域に近い土地での演説は、心の奥にあった衝動を一気に押し出した可能性がある。法廷では、その瞬間の心理が淡々と語られたが、背景には長年の家族崩壊と旧統一教会への憎悪が積み重なっていた。

精神鑑定医「精神障害は認められない」

また、読売テレビによると、鑑定医は「何の精神障害も認められなかった」と断言。
刑事責任能力の有無が裁判の大きな焦点となる中、この証言は量刑判断に影響する可能性が高い。

弁護側は母親の多額献金により家庭が崩壊し、兄の自死や自身の進学断念へつながった事実を強調し続けている。
一方、検察側は「不遇な生い立ちが刑罰を軽くする理由にはならない」と主張し、両者の対立は深まるばかりだ。

韓鶴子総裁、娘への襲撃計画。2005年から続いた“未遂の連鎖”

被告人質問では、山上被告が2005年頃から旧統一教会幹部の襲撃を考えていたことも明らかになっている。
2018年の韓総裁の娘来日時にはナイフと催涙スプレーを持って待ち構え、2019年には火炎瓶を準備して名古屋で機会をうかがった。しかしいずれも「躊躇して実行できなかった」と説明した。

その後、銃製造へシフトした理由については、「火炎瓶よりも銃が一番いいと思った」と淡々と語っている。

事件の“最後の分岐点”が語られるか

4日は、山上被告への最後の被告人質問が予定されており、安倍元首相や遺族にどのような言葉を向けるのかが注目される。
旧統一教会の存在がどこまで被告の心理形成や判断に影響し、量刑に反映されるのか。奈良地裁の判断は、社会の視線を集め続けている。