
夕暮れの静けさが街に落ち始める頃、東の空に淡い光がにじみはじめる。やがてゆっくりと姿を現すのは、今年最後の満月「コールドムーン」。
12月4日今夜は、太平洋側を中心に晴れる地域が多く、冬の冷え込みが強まるなかでも、夜空を見上げれば大きく輝く月と、それを取り巻く12月ならではの天体ショーが楽しめるという。空は一年の終わりを告げる舞台装置に変わる。
冬の空に昇る「コールドムーン」 満月の瞬間は5日朝
満月となる瞬間は5日午前8時14分。今夜の月もほぼ円盤に近く、ほとんど満月と言ってよい姿を見せる。
冬の満月が「コールドムーン」と呼ばれてきたのは、北半球で一年のなかでも最も夜が長く、空気が研ぎ澄まされる季節に訪れるためだ。
古くはネイティブアメリカンの部族が、その土地の気候や生活に合わせて月に名前をつけ、「スノームーン」「ウィンターメーカームーン」と呼んだ時代もある。
季節の移ろいを受け止めながら見上げる満月は、ただの天文現象ではなく、人の営みと結びついてきた冬の象徴でもある。
太平洋側は晴天広がる見通し 冷気の中に澄む“光の輪”
4日今夜は、北海道や北陸、山陰で雲がかかると報じられているが、太平洋側ではお月見日和が広がる見込みだ。
夕刻、空気は冷たく張りつめ、地表の温度が日ごとに下がってゆく。
しかし、冬の透明度の高い空には、雲の切れ間から月明かりが力強く落ちる。ビルの谷間を照らす光は濃い影をつくり、海辺では波頭に白い縁取りを与える。
都市でも山間でも、冬の月はあらゆる景色を一段とくっきりと浮かび上がらせる。
夜間の冷え込みは厳しいが、それだけ視界は澄み、月本来の存在感が際立つ。防寒だけ整えれば、冬特有のキラリと硬質な光を存分に味わえるはずだ。
今年最後の“スーパームーン” いつもより大きく、明るく
今回の満月はスーパームーンにあたるとされる。
月が地球に最も近づく「近地点」と満月が重なるため、遠くにある満月より最大14%大きく、30%明るく見えることがある。
今年は10月・11月に続き、3カ月連続でのスーパームーン。そして5日はその締めくくりとなる夜だ。
特に月が地平線から昇り始める月の出直後は、ビルや木々との対比によって視覚効果が強まり、月が実際以上に巨大に見える「月の錯視」が起こる。
街の灯りがともる時間帯、東の空にゆっくりと現れる大きな月は、一瞬息をのむほど鮮烈だ。
月と木星が寄り添う夜、そして流星の雨へ 12月は天体ショーの連続
また、今月は満月を皮切りに次々と天文現象がやってくる。
●7〜8日:月が木星に近づく“接近ショー”
冬空でひときわ明るい木星に、月が寄り添うように見える。夜空に二つの光が並ぶ姿は、肉眼でもはっきり確認できる。
●14〜15日:ふたご座流星群がピークへ
“天の紙吹雪”のように空を横切る、冬の主役級の流星群。適条件なら1時間に60〜120個もの流れ星が期待できる。今年は月明かりの影響が少なく、観測条件がきわめて良い。
●22〜23日:こぐま座流星群が極大に
派手さはないものの、今年は新月期に近く、淡い流星が見つけやすい。
●27日:月と土星の接近
夕方から南の空で、半月に近い月と黄金色の土星が並ぶ。
冬は星が最も明るく見える季節。澄んだ空気の中で、夜空はひときわ賑やかになる。
太陽系外の来訪者「3I/ATLAS彗星」も接近中
太陽系外から飛来した恒星間天体「3I/ATLAS彗星」も観測のチャンスを迎える。
12月19日に地球に最接近し、望遠鏡を用いれば確認できる可能性があるという。
70億年以上前に誕生したとされる宇宙の旅人が、2025年の冬の夜空を横切る。満月・惑星・流星群と並ぶ、貴重な天文イベントだ。



