
飲食店や小売店の余剰食品を「利益」と「新規客」に変える。北欧発のToo Good To Goは、日本上陸1週間で25万ユーザーを獲得した。慈善活動を超えた、その圧倒的な経済合理性と成長戦略を読み解く。
日本上陸1週間で25万人が動いたフードロス削減の潮流
2026年1月、世界最大のフードロス削減マーケットプレイス「Too Good To Go(トゥー・グッド・トゥ・ゴー)」が日本での正式ローンチを果たした。その反響は、サステナブル分野のサービスとしては異例のスピード感を見せている。
開始からわずか1週間で登録ユーザー数は25万人を突破し、App Storeの総合ランキングで1位を獲得した事実は、国内における社会課題解決への潜在的な関心の高さを物語っている。
現在、ファミリーマートやNewDays、クリスピー・クリーム・ドーナツといった名だたる大手チェーンから、地域に根ざした個人店まで、多様なパートナー企業が参画している。都心の主要駅周辺を中心に、これまで廃棄されていたはずの余剰食品が「価値ある商品」として次々とユーザーの手に渡る、新たな循環が急速に形成されつつある。
独自性のある取り組みが他社アプリを凌駕する集客効果を生む理由
同社が既存のフードロス削減サービスと決定的に異なるのは、廃棄コストの削減という「守り」の施策を、強力な「マーケティングの起点」に変えた点にある。その核となるのが、中身をあえて指定しない販売形式「サプライズバッグ」だ。
これは店舗側のオペレーション負担を最小限に抑えるだけでなく、ユーザーにとっては宝探しのような娯楽性を提供している。
特筆すべきは、同サービスが持つ圧倒的な新規客送客力だろう。統計によれば、利用者の約61%がアプリをきっかけに初めてその店舗を訪れている。
さらに、来店したユーザーの約41%がサプライズバッグ以外の別商品を「ついで買い」するというデータも出ている。単なるロス削減に留まらず、広告費をかけずに新規顧客との接点を創出し、客単価を向上させる仕組みこそが、同社の独自性といえる。
社会正義と経済的インセンティブを融合させる北欧発の哲学
「フードロスのない社会を目指す」というビジョンの裏側には、デンマーク発の企業らしい、極めて現実的なリアリズムが貫かれている。代表の大尾嘉宏人氏は、同サービスが地域の加盟店舗による協力なしには成立しないことを深く認識している。彼らの哲学は、環境保護という大義を「善意」や「我慢」に依存させないことにある。
店舗には利益と新規顧客を、ユーザーには安価で魅力的な購入体験を。関わる全員が経済的な実利を得られるエコシステムを設計することで、無理なく、かつ持続可能な形で社会課題の解決を推進している。この「三方良し」の設計思想が、世界各地で受け入れられる最大の要因となっている。
サステナビリティを攻めの経営に転換する視点と学び
Too Good To Goの劇的な躍進は、日本企業に対して重要な示唆を与えている。SDGsを単なる「コスト」や「守りの義務」として捉える段階は、もはや過去のものとなった。同社は、廃棄というマイナス要素を「新規客との接点」というプラスの資産へと鮮やかに転換してみせた。
「正しいこと」を行いながら、同時に「ビジネス」としても力強く成長させる。社会課題の解決を、いかにして魅力的な体験価値へとデザインし直せるか。同社の日本における成功は、これからのサステナブル・ビジネスが歩むべき、一つの完成された道筋を示している。



