
ファッションと音楽の祭典が、単なるエンターテインメントの枠を超え、持続可能な地域社会のあり方を提示するプラットフォームへと進化を遂げている。
東京ガールズコレクション実行委員会(企画/制作:株式会社W TOKYO)は、10日、ツインメッセ静岡にて『SDGs推進 TGC しずおか 2026 by TOKYO GIRLS COLLECTION』(以下、TGC しずおか)を開催した。「TGC地方創生プロジェクト」の一環として5回目を迎えた本イベントは、史上最多となる10組のアーティストライブによる熱狂もさることながら、地域産業の承継や環境負荷低減といった「サステナビリティ」の文脈においても重要な示唆を与えるものとなった。
史上最多10組の競演が生んだ熱狂
ステージでは、グローバルに飛躍するONE OR EIGHTや、ティーンに絶大な人気を誇るしなこ、勢いに乗るWILD BLUEらが会場を温めると、BMSG所属の8人組ダンス&ボーカルグループMAZZELが登場し、圧倒的なスキルで観客を魅了した。また、日本のアイドル文化を発信する「KAWAII LAB.」からは、昨年のレコード大賞優秀作品賞を受賞したFRUITS ZIPPERをはじめとする4組が集結した。
次世代との共創―地域に根差すエンターテインメント
本イベントの白眉は、地域社会との深い連携にある。TGC NEXT ARTISTとして登場したKID PHENOMENONは、地元・常葉大学附属常葉中学校・高等学校ダンス部とのスペシャルコラボレーションを実施した。
LDH JAPANの運営するスクールインストラクターによる指導とリハーサルを経て実現したこのステージは、単なる共演にとどまらず、次世代を担う若者たちへの「良質な経験の提供」という教育的な側面(SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」)を内包している。エンターテインメントが持つ求心力を活用し、地域の若者にプロフェッショナルな現場を体験させることは、人材育成の観点からも意義深い。
伝統工芸を「纏う」―サステナブルな文化継承の形
地域固有の文化資産をいかに未来へ繋ぐか。「SHIZUOKA HAND CRAFT ARTS STAGE」では、その一つの解が提示された。
静岡市が誇る伝統工芸「駿河竹千筋細工」や、廃棄される茶葉を活用したお茶染めなど、地場の技術を現代のファッションへと昇華させた衣装が登場。CANDY TUNEの立花琴未らがモデルとしてランウェイを歩き、伝統工芸が単なる鑑賞物ではなく、現代のライフスタイルに馴染む「生きた文化」であることを視覚的に訴求した。これは、伝統産業の後継者不足という課題に対し、新たな価値と市場を創出する「つくる責任 つかう責任」の実践と言えるだろう。
バックヤードから変える未来―徹底した環境配慮
華やかなステージの裏側、バックヤードにおいてもSDGsの精神は徹底されていた。株式会社W TOKYOによると、出演者に提供されるケータリングでは「地産地消」を推進。用宗しらす、静岡抹茶、清水港の天然南まぐろなど、県産食材がふんだんに振る舞われた。地域の食文化をインフルエンサーである出演者を通じて発信することは、地域経済の活性化に直結する。
特筆すべきは、環境への配慮だ。提供容器には卵の殻を再利用した次世代バイオマス食器「シェルミン」や、竹やバガス(サトウキビの搾りかす)を原料とした「WASARA」、木製カトラリーを採用し、脱プラスチックを徹底した。イベント運営における廃棄物削減は喫緊の課題だが、TGC しずおかは具体的な資材導入によって、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実践モデルを示している。
サステナビリティを「自分ごと」に
「SDGs推進 TGC しずおか」は、若者が熱狂するファッションショーというパッケージの中に、巧みに「地域課題の解決」と「環境意識の啓発」を組み込んでいる。
参加した来場者は、好きなアーティストを目当てに足を運び、その体験を通じて地元の伝統工芸の美しさや、サステナブルな取り組みに自然と触れることになる。この「楽しみながら社会課題に触れる」動線づくりこそが、持続可能な社会を実現する上で、メディアやイベントが果たすべき真の役割ではないだろうか。



