
年末年始や年度替わりといった「区切りの時季」に、退職代行サービスの利用が目立っている。いわゆる「あけおめ退職」や、4月前後の年度初め退職は、単なる一時的な流行ではなく、現代の働き方や情報環境が生み出した社会的傾向ともいえる。長期休暇による自己省察、新年・新年度という心理的な節目、そして退職代行の普及が重なり、退職という選択が集中的に表れやすくなっている。なぜ「区切りの時季」に人は仕事を辞めやすいのか。その背景と注意点を整理する。
年明けと年度初めに集中しやすい退職行動
年末年始や年度替わりといった「区切りの時季」に、退職の動きが目立つ。年明けには退職代行サービスへの依頼が増えたと報じられ、実際に複数の業者で利用が急増したとされる。
同様に、年度初めである4月前後も、人事異動や契約更新と重なり、退職が表面化しやすい時期として知られている。
長期休暇が生む「立ち止まる時間」
区切りの時季に退職が増える理由として、まず長期休暇の影響が挙げられる。仕事から距離を置き、自身の生活やキャリアを振り返る時間が生まれることで、「続けるか、辞めるか」という判断が具体化しやすくなる。
年末年始休暇を通じて「会社を辞めたいと思ったことがある」と回答した正社員は約3割に上るという調査結果もある。
新年・新年度という心理的な節目
新年や新年度は、心理的にも「リスタート」の意味を帯びる。しかも日本の職場は、制度面でも年度単位で動きやすい。人事異動、配置転換、評価の切り替え、契約更新が重なるため、「ここで変わらなければ離れる」という判断が生まれやすい構造がある。
若年層で顕著になりやすい世代差
年末年始休暇明けに同僚が退職していた経験(いわゆる「あけおめ退職」)は、正社員全体で28.4%、20代では41.1%と高い割合を示している。
キャリア初期にある20代は、職場適応や成長実感の有無が意思決定に直結しやすく、区切りの時季を「動くタイミング」と捉えやすい傾向がある。
退職代行が「辞めるハードル」を下げた
退職代行サービスの普及は、退職の実務的・心理的コストを下げた。本人が直接上司と対面せずに意思を伝えられるため、退職を先延ばししていた層が「区切り」を機に行動へ移しやすくなる。
SNSなどを通じて体験談が共有されることで、退職が個人の例外的な出来事ではなく、一定の選択肢として可視化された面もある。
事例に見る「ルールの明示」とトラブル予防
区切りの時季には退職手続きが集中し、会社側の対応も慌ただしくなる。だからこそ、貸与品返却、私物回収、書類の受け渡しなど、事務連絡の整理がトラブル予防の要点となる。
退職代行を利用する場合も、業務範囲や対応内容を事前に確認しておくことが重要である。
退職代行「モームリ」を巡る独占業務の論点
退職代行サービス「モームリ」をめぐっては、弁護士法違反、いわゆる非弁行為の疑いが報じられた。
論点は、単なる「退職の意思伝達」を超えて、未払い賃金や退職条件など、法律上の争点になり得る事項の交渉に踏み込んだかどうかにある。
今回の利用増加に違法性はあるのか
年明けや年度初めの退職代行利用の増加そのものが、直ちに違法というわけではない。退職代行が本人の使者として退職意思を伝えるにとどまる限り、法的に問題になりにくいとされている。
一方で、個別事案としてどこまで踏み込んだかは、契約内容や実際のやり取り次第である。
退職代行の合法・違法ライン比較表
| 行為・対応 | 一般の退職代行 | 労働組合型 | 弁護士型 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 退職意思の伝達 | 〇 | 〇 | 〇 | 伝達にとどまる限り問題化しにくい |
| 退職日の連絡・備品返却案内 | 〇 | 〇 | 〇 | 事務連絡の範囲を超えると争点化の恐れ |
| 未払い賃金の交渉 | × | 〇 | 〇 | 一般業者は非弁行為の恐れ |
| 退職条件の交渉 | × | 〇 | 〇 | 「交渉に踏み込むか」が境界線 |
| 損害賠償請求の交渉 | × | △ | 〇 | 法律事件性が強い |
| 裁判・労働審判の代理 | × | × | 〇 | 弁護士のみ可能 |
今後の見通し
区切りの時季に退職が増える現象は、長期休暇による自己省察、新年・新年度という心理的節目、退職代行の普及が重なって表面化している。
これは一時的な流行ではなく、現代の働き方と情報環境が生み出した社会的傾向と捉えるのが現実的である。



