
俳優の成宮寛貴(43歳)が、7日放送の日本テレビ系「メシドラ~兼近&真之介のグルメドライブ~」で、復帰後初となる地上波バラエティ番組に出演することが明らかになった。
2016年12月の電撃引退からおよそ9年。長い沈黙を経て再び脚光を浴びる成宮は、この間に何を抱え、そして今どこへ向かおうとしているのか。過去の報道と近年の動向を改めて振り返りながら、現在地を探る。
引退の背景にあった葛藤と孤立
成宮寛貴は2000年代以降、多くのドラマや映画で存在感を示し、特に「相棒」シリーズで杉下右京の三代目相棒・甲斐亨を演じたことで国民的俳優としての地位を確立していた。しかし2016年12月、週刊誌の薬物疑惑報道が発端となり、芸能界からの突然の引退を発表した。
当時、所属事務所は薬物使用を否定し、本人の尿検査も陰性だったと説明した。決定的な証拠が提示されないまま、疑惑と憶測だけが独り歩きし、世間の視線は日に日に過剰となった。成宮は直筆のコメントで「信頼していた友人に裏切られた」「これ以上大切な人に迷惑をかけられない」と胸中を吐露し、芸能界から姿を消した。
当時は、プライベートな領域まで踏み込まれ、本人の性的指向に関する憶測や晒しを懸念する声もあった。成宮は、芸能界に身を置く限りこうした状況から逃れられないと判断し、完全な沈黙を選んだ。
ドラマ降板やCM契約解除に伴う多額の違約金も報じられ、精神的にも肉体的にも追い詰められた時期だったとされる。引退後は海外に拠点を移し、日本のメディアから距離を置いた生活が続いた。SNS更新も途切れがちで、「失踪状態」と表現されることすらあったが、彼は長い時間をかけ、自分自身を立て直していった。
静かな“助走”からの俳優復帰
転機となったのは昨年11月。
大阪のボートレース場で行われたイベントにゲスト出演し、「8年ぶりに俳優の仕事を再開しました」と自ら報告した。この発言は業界にもファンにも驚きをもって迎えられ、続いて配信ドラマへの出演が正式に発表された。
今年3月、ABEMAオリジナルドラマ「死ぬほど愛して」が放送開始。成宮は、二面性を持つ“危険な男”という難役を演じ、8年の空白を感じさせない存在感を示した。緊張感のある眼差し、張り詰めた空気を纏う演技に対し、視聴者からは「むしろ円熟味が増した」「これを機にスクリーンに戻ってほしい」との声が寄せられ、評価は上々だった。
この作品は、成宮にとって単なる“復活宣言”ではなく、俳優としての新しいステージを切り開くものであった。ブランク期間に感じた焦燥や孤立を糧にし、表現者としての深みを手に入れたかのような演技だった。
来年1月から始まる舞台「サド侯爵夫人」では、演出家・宮本亞門氏と25年ぶりにタッグを組む。地上波ドラマより先に演劇の世界に踏み出したことは、“役者としての原点回帰”と捉える声もある。
「メシドラ」出演の意味――素顔の再解放
そして今回、地上波バラエティ番組「メシドラ」への出演が決まった。バラエティはドラマと異なり、俳優としてのキャラクターではなく“本人”の姿が映し出される場だ。そのため、復帰後の地上波活動としては極めてハードルの高い選択でもある。
番組は「完全ノー台本&ノー仕込み」を掲げ、MCの兼近大樹と満島真之介がゲストとともに、その土地のグルメを巡る“素の旅番組”。神奈川県伊勢原市をめぐる収録では、成宮が「久しぶりのバラエティ、9年ぶりくらい」と語り、満島から「日本にいたんですか!?」と問われる一幕もあった。
成宮は「バラエティに出られると聞いて、ドキドキして眠れなかった」と告白。沈黙の期間が長かっただけに、地上波で自らの言葉を発することへの緊張と責任感がにじむ発言だった。
この番組への出演は、成宮にとって“素顔の再解放”である。配信ドラマや舞台とは違い、視聴者が“今の成宮寛貴”をありのまま受け止める初めての機会となる。
再起をめぐる賛否と向き合う覚悟
成宮の復帰には、依然として賛否が伴う。疑惑報道の真相が公の場で整理されることはなかったが、引退当時の「守りたいものがあった」という言葉は、現在も多くの読み解きを呼ぶ。
一方で、俳優としての表現力を再び見たいと願う声は年々増え、今回のドラマ復帰に対しても肯定的な評価が多かった。地上波は視聴者層が広く、配信ドラマとは違い“世間の真正面”に立つことになる。だからこそ、今回のバラエティ出演は大きな節目だといえる。
過去の出来事を完全に消し去ることはできない。しかし、それを抱えた上でどのように歩み、どのように作品と向き合うか。いま成宮が立つ舞台は、かつて以上に厳しく、同時に自由でもある。
これからの成宮寛貴――試練か、再評価か
「メシドラ」出演を起点に、成宮は今後テレビでの露出を増やす可能性が高い。舞台、配信ドラマ、そしてバラエティ――表現の場を広げつつある姿は、芸能界での“第二幕”が本格的に始まったことを示している。
かつての挫折と沈黙は、彼にとって避けようのない影でもあった。しかし、成宮の歩みは明らかに加速している。視聴者が彼の“今”をどう受け止めるかによって、今後の評価は大きく変わっていくだろう。
長い空白を経て、再び光の当たる場所へ戻ってきた成宮寛貴。静かだが確かな決意をにじませながら、彼は新しい物語を歩み始めている。



