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流行語大賞に異例の個人名 ひょうろく(38歳)が示した“存在そのもの”の価値

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ひょうろく氏
ひょうろく氏 Instagramより

2025年の「現代用語の基礎知識選 2025T&D保険グループ 新語・流行語大賞」のノミネート30語に、芸人の個人名「ひょうろく」が入った。かつては「そんなの関係ねぇ」「ゲッツ」など一発ギャグが大賞候補をにぎわせ、芸人は流行語の主役だった。しかしSNSが主戦場となった現代では、芸人由来の言葉が選ばれるケースは減っていた。
その状況で、フレーズではなく人物名そのものがリスト入りしたことは極めて珍しく、しかもひょうろく(38歳)は“言葉”ではなく“存在”で社会の辞書に刻まれた稀有な存在である。

 

予測不能な反応が生み出す「ひょうろく現象」

ひょうろくが注目を集めたのは、TBS系『水曜日のダウンタウン』でのリアクションだった。

臓器売買ドッキリでは説明不能な挙動を見せ、心霊企画では仕掛け人であるにもかかわらず恐怖に飲まれ、本気で小便を漏らしてしまった場面が放送された。
一般に、芸人のリアクションは“ある程度の計算”が働くものだ。しかし彼の反応にはその計算が存在しない。視聴者は「素なのか演技なのか」「どこまで理解しているのか」が読み取れず、番組側も予測できない。
この“境界が見えない”感覚こそが現代的で、SNSでの反響でも「リアルを超えたリアル」「説明できないのに目が離せない」といった声が相次いだ。タレント性を言語化できないまま魅力へ転じている点が、ひょうろく現象の核心だ。

 

外見の“意味不在”が逆に武器となる

スキンヘッド、わずかにズレたファッション、常時「困惑」を湛えた表情。
通常、芸人の外見には“わかりやすい属性”が付与される。しかし彼の見た目は、逆に意味を拒むように機能している。属性が読めない人物は分類できず、視聴者は無意識に「正体」を探ろうとする。
画面に映った瞬間の空白感、落ち着かなさ、安心しきれない雰囲気。それらが、情報が飽和した時代においてむしろ強烈な個性となる。役者として出演した際にも、演技の抑制と素の混濁が画面に立ち上がり、一般的なタレントにはない“読めなさ”が魅力として評価された。

 

鹿児島の高専から建設会社へ 異端のバックボーン

ひょうろくの出自は、芸人としては異例である。鹿児島の高専を卒業した後、千葉県内で建設作業員として働いた。芸能界とは無縁の現場で汗を流す生活の中で、「何者かになりたい」という衝動だけが強まっていったという。
その後、同級生の誘いでお笑いの道へ入り、コンビ「ジュウジマル」を結成。だがネタ作りは相方に任せきりで、成果は出なかった。解散後も武器が定まらず、ライブでも強い手応えを得られない時期が長く続いた。
しかしこの“迷走”こそが、後のひょうろくの個性を育てた。計算された芸ではなく、環境が育んだ素朴さと衝動性が、現在の“不可解さ”の源泉となっている。

 

さらば青春の光が拾い上げた「異常な行動力」

人生の転機は、さらば青春の光のYouTubeチャンネル企画だった。「30分以内に事務所へ来た芸人に1万円」が提示されると、ひょうろくはバイトを早退してまで全力で向かった。
この“狂気じみた行動”がさらばの2人の目に留まり、以降、彼は動画出演を重ねるようになる。視聴者のコメント欄は、「理解不能だが魅力的」「人間なのかキャラクターなのかわからない」という評価であふれ、一種の観察対象として話題化した。
YouTubeにおいて、彼の存在は“企画を成立させる不可欠なピース”となり、その異質さがメインコンテンツへと昇格した点は特筆すべきである。

 

テレビ進出と俳優業 三谷幸喜も注目する異形スター

YouTubeで注目された後、『水曜日のダウンタウン』が彼を本格的に起用したことで、露出は一気に拡大した。CMや旅番組、情報番組へと活動の幅が広がり、さらにNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』にも出演。
俳優としての存在感は、三谷幸喜が脚本を手がけるフジテレビ系『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』でも評価された。三谷は「今年の新語・流行語大賞の本命はひょうろく」と語り、その才能を高く評価している。
38歳にして異例の飛躍を遂げている背景には、表現者としての技術ではなく、“読めない人物”としての存在価値がある。

 

ひょうろくは「芸人の売れ方」を更新し続ける

従来、芸人が売れるためにはネタやトーク力、SNS発信などが鍵だった。しかし、ひょうろくはそのどれにも依存していない。
武器はただひとつ、「説明不能な存在感」。
予測不能な行動、計算の欠片も感じさせないリアクション、それでいて画面に強烈な印象を残す吸引力。
この“評価不能”が、新しいタレント像として成立している。ひょうろくは、芸人の売れ方に新しいモデルを提示しつつある。


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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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