企業や団体におけるサステナビリティの追求として、SDGs達成に向けた事業や取り組みをアピールするケースが増えてきました。実際にSDGsへの取り組みを行うとなると、どの目標に向けてどのような施策を企画したら良いか悩む担当者の方も多いのではないでしょうか。
cokiでは、皆さまのSX(サステナビリティトランスフォーメーション)のお役に立つべく、SDGsに対して積極的な企業の取り組みをピックアップしてご紹介しております。
今回取り上げる事例は、株式会社商船三井です。
本ページをご参考に、事業におけるサステナビリティ、SDGsに関する活動を進めるヒントにしていただければ幸いです。
SDGsについては、“ 「SDGs」と「サステナブル」の意味|私たちはなぜSDGsに取り組む必要があるのか ”を、ご覧ください。
株式会社商船三井のSDGsへの取り組み
- 株式会社商船三井
- 業種:海運業
- 創業:1878年
- 従業員数:1,119名(陸上794名 海上325名):他社への出向者等を除く(2021年3月31日現在)
- 参照公式サイト:https://www.mol.co.jp/index.html
商船三井は、5つのサステナビリティ課題(マテリアリティ)を特定し、経営計画と連動させて、課題解決に向けた取り組みを推進しています。マテリアリティに取り組むことで、SDGsに貢献し、企業価値を最大化するするというスタンスです。
- 商船三井のサステナビリティ課題(マテリアリティ)
- 輸送を通じた付加価値の提供
- 海洋・地球環境の保全
- 海の技術を進化させるイノベーション
- 地域社会の発展と人材育成
- 事業を支えるガバナンス・コンプライアンス
株式会社商船三井のESGならびにSDGs目標への取り組みは多岐に渡ります。ここでは、メインの事業である「輸送」に焦点をあて、マテリアリティの中でも「海洋・地球環境の 保全」について、最近の取り組み事例をピックアップして見ていきましょう。
※取り組み事例の中には、複数の目標にまたがる取り組みもありますが、代表的な目標を掲げて記載しています。
目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」への取り組み
目標7の ゴール は「全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」です。
商船三井では、エネルギー効率の改善、 クリーンエネルギー利用の促進を掲げています。
新たな海洋事業としては、2017年3月に洋上風力発電設備設置船への出資、東京大学主宰の産学共同研究プロジェクトにも参画。風圧を利用した帆を主体に推進機が補助する船の研究を実施し、2022年に運航開始を目指しています。
また、CO2排出量削減に資する 代替燃料として、LNGや燃焼時に二酸化炭素(CO2)を出さないアンモニアに注目。大阪湾ではすでにLNG燃料船が就航しています。
また、2021年11月4日には、大型アンモニア輸送船についても開発を始めると発表しました。
目標13「気候変動に具体的な対策を」への取り組み
目標13の ゴール は「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」です。
大型の船を運行させる海運業界は、世界全体の温室効果ガス排出量の約2.8%を占めていると言われており、近年増加傾向にありました。 商船三井では、地球温暖化抑制のために脱酸素への取り組みを加速。これまでの2050年には「温室効果ガス排出50%減」を「実質ゼロ」へ新たな目標を設定しなおしています。これは、デンマーク海運大手のマークスに続く、世界で2番目の試みです。
目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」への取り組みと連動し、LNGをはじめとしたクリーン代替燃料や省エネ技術の導入。さらに運航状況のリアルタイム・モニタリングを行い、燃料消費量の削減に努めるほか、業界団体や関係省庁を通じたルール作りへも積極的に関与。自社でも低炭素事業拡大を行っています。
目標14「海の豊かさを守ろう」への取り組み
目標14の ゴール は「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」です。
船が運行する海。商船三井では、海洋汚染の防止と生物多様性の維持に取り組むべく、海洋プラスチックの削減を目指し専用回収システムを新造船に搭載。荷役中にマイクロプラスチックを採取する取り組みを始めました。さらに2021年には回収したマイクロプラスチックと微細藻類等から炭化物を製造し、エネルギーを得る実験に成功。
海洋中のマイクロプラスチックを回収するだけにとどまらず、エネルギーとして活用することで、海洋環境保護とサーキュラーエコノミーへの取り組みを推進しています。
目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」への取り組み
目標17の ゴール は「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」です。
SDGsは企業単体だけではできません。そこで、商船三井では、公的・民間セクターとのパートナーシップを推進することで、その目標達成を推し進めようとしています。
商船三井株式会社のサステナビリティ推進体制
商船三井では、2018年にサステナビリティ推進プロジェクトチームを結成。サステナビリティ課題(マテリアリティ)を打ち立て、そのテーマ/目標/ゴールを設定。ポイントととしては、それを達成しなかった場合のリスク(ネガティブインパクト)を明言しています。
例えば「海洋・地球環境の 保全」について達成できなかった場合はどうでしょう。地球温暖化による気候の激化、それによる安全運航の阻害はもちろんあります。さらに、今後の世界情勢を考えた場合に「当社に対する社会からの信頼失墜」や「罰金・制裁金等の金銭的負担」といった具体的な内容まで考えています。
「社会からの信用」は重要なキーワードです。実際に、2020年にモーリシャスで起きた「WAKASHIO(わかしお)」の座礁事故による燃料油の流出。この船の船主は、長鋪汽船。商船三井ではありませんが、商船三井は長鋪汽船から船を借りて荷物を輸送していた「定期用船者」でした。商船三井には法的な責任はなかったにもかかわらず、謝罪会見は商船三井の本社で行っています。これは「法的責任」ではなく「社会的責任」を考えた対応であり、SDGsを意識した行動と言われています。
SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」への取組事例~cokiの記事より
coki では、サステナビリティについて考え、実際に取り組んでいる様々な団体・企業への取材を行っています。今回は SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」 について、さまざまな視点で取り組む方々の記事をピックアップしました。ぜひご覧ください。
株式会社SUSTAINABLE JAPAN東濵孝明「未来の子供たちのためにキレイな海を残す」海洋ゴミの回収からリサイクルを目指して
マイクロプラスチックの海洋汚染問題は、生態系のバランスを崩すだけでなく、食物連鎖による人の健康への影響が懸念され、地球規模での問題となっています。
熊本県の株式会社SUSTAINABLE JAPANは、海洋ゴミの回収だけでなく、最終的には無害化して環境に循環させるシステムの実証実験に取り組んでいる企業です。代表取締役社長の東濵孝明さんに、事業にかける想いとステークホルダーへの感謝の気持ちをお伺いしました。
SDGs最先進県 神奈川県の先駆的な取り組み3選~行政がつながりの仕組みと可視化を推進
SDGs達成の鍵とされている地方自治体。国・政府、企業・団体、地域住民の間に位置する行政機関である地方自治体は、グローバルとローカルな社会課題の解決策をつなぐ重要な存在です。その先導的な立場として注目されているのが神奈川県は、2018年にSDGs未来都市、自治体SDGsモデル事業として選出されています。今回は神奈川県政策局いのち・未来戦略本部室SDGs推進グループのグループリーダー清木信宏さんに、神奈川県の具体的な取り組み施策、SDGs金融や地域通貨の広がり、ステークホルダーとの関係性についてお話を伺いました。
参照: coki
cokiは、法人のSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を支援します
法人のサステナビリティを可視化するメディアcokiの目的は「社会の公器」を体現する企業を増やし、サステナブル社会を実現することです。cokiでは、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)支援の一環として、会員さまに個別インタビューを行い、サステナビリティの観点から企業価値を高める情報発信を行ったり、想いを同じくする会員の企業・団体・個人との交流を可能にするビジネスコミュニティをご提供しています。
cokiを通じて、 SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション) をはじめてみませんか?
新規登録については、こちらからご覧ください。